本記事は「配当を軸に、新領域の上振れを狙う」観点でKDDIを長期コア候補として評価します。
分析対象の概要(セクター・規模・ビジネスモデル)
KDDIは国内携帯2位の総合通信。
個人(モバイル/固定/ライフデザイン)と法人(ネットワーク/データセンター/セキュリティ/デジタルBPO等)を両輪に、非通信(金融・エネルギー・ローソン・DX)が成長エンジン化。
項目 | 最新トピック/数値 |
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売上・利益(2025/3期) | 売上5兆9,180億円(+2.8%)/ 営利1兆1,187億円(+16.3%)/ 純利益6,857億円 |
会社計画(2026/3期) | 売上6兆3,300億円(+7.0%)/ 営利1兆1,780億円(+5.3%)/ 年間配当80円 |
四半期(2026/3期 1Q) | 売上1兆4,363億円(+3.4%)/ 営利2,725億円(-1.6%)※販促費一時増 |
時価総額(2025/9/6時点) | 約9.6〜10.6兆円レンジ(為替・集計差異あり) |
資本政策 | 最大4,000億円の自己株式取得(上限4.92%・2025/12/23まで)を決議 |
技術ドライバー | au Starlink Direct:衛星—スマホ直接のデータ通信を世界初で商用開始(2025/8/28) |
※出典は文末「出典・参考リンク」を参照。
3C+リスク分析(自社/競合/市場+リスク)
Company(自社)
- 収益源の多層化:通信ARPUに加え、金融・エネルギー・ローソン・DXが利益を底上げ。
- 資本配分の強さ:増配+自社株買い(4,000億円)でEPSを持続的に押し上げる設計。
- 衛星直結の先行:圏外エリアでもアプリ通信が可能に。防災・レジリエンス価値を実装。
Competitor(競合)
- NTT:売上規模13.7兆円級。IOWN等の長期投資×巨大顧客基盤。
- ソフトバンク:営利9,890億円、高い配当性向で訴求。メディア・EC/法人DX/金融の再加速。
- 楽天モバイル:加入者900万超へ。ARPU改善で損益改善を継続(黒字化途上)。
Customer/Context(市場)
- 料金競争は沈静化の兆し。一方で動画/ゲーム/生成AIでトラフィックは増勢。
- 法人はクラウド移行・セキュリティ・データセンター/デジタルBPO需要が追い風。
- 防災・強靭化は政策的にも重視。衛星直結・相互補完の重要性が増大。
主要リスク
- 規制/政策変更による料金抑制プレッシャー(ARPU頭打ちリスク)。
- 5G/海底ケーブル/データセンターなどCAPEX回収の長期化。
- ローソンの投資回収は小売景況・人件費・出店政策に左右。
- 衛星直結は周波数・端末対応の広がり次第で収益化速度が変動。
SWOT分析
強み(S) | 弱み(W) |
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機会(O) | 脅威(T) |
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財務分析(PL/BS/CF/株主還元:競合比較)
PL(損益)
企業 | 売上高 | 営業利益 | 期 | ポイント |
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KDDI | 5.918兆円 | 1.1187兆円 | 2025/3期 | 非通信(金融・エネ・ローソン・DX)が増益寄与 |
NTT | 13.7兆円 | — | 2025/3期 | 規模優位、研究開発/海外/データセンターが厚い |
ソフトバンク | 6.5443兆円 | 9,890億円 | 2025/3期 | 全セグメント増益、配当性向高め |
BS(貸借)
- KDDI:金融子会社の預金・貸出増でB/S拡大。自己資本比率は安定域。
- NTT:巨大グループで分散。データセンター投資・海外展開が継続。
- ソフトバンク:負債水準は高めだがキャッシュ創出力と事業再加速で耐性。
CF(キャッシュフロー)
- KDDI:営業CF安定、投資CFは5G/IT/金融で厚め。フリーCFで還元余力を確保。
株主還元
企業 | 配当 | 自社株買い | コメント |
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KDDI | 80円/株(会社計画・2026/3期) | 上限4,000億円(2025/12/23まで) | 増配+買戻しでEPS重視を明確化 |
NTT | 連続増配を継続 | 適宜実施 | 分割で個人投資家の裾野拡大 |
ソフトバンク | 高配当政策(性向高め) | — | 利回り訴求+成長投資を両立 |
セクター比較
- 成長力:KDDIは非通信の多層化で“適温成長”。NTTはIOWN等の長期テーマ、ソフトバンクは法人/メディア再編と金融の寄与が拡大。
- ディフェンシブ性:3社とも安定配当。KDDIは増配+買戻しで総還元の厚みが際立つ。
- 技術・新領域:KDDIは衛星データ直結を世界初で商用化。NTTは光×無線の高度化、ソフトバンクは生成AIや法人ソリューションを加速。
- 新興勢力:楽天モバイルは加入者900万超へ。市場全体の価格・品質バランスに影響。
投資家にとってのメリットとリスク
メリット
- 連続増配+4,000億円の買戻しで1株価値を押し上げる設計(総還元が視認的)。
- 非通信の収益分散で景気・規制の変動耐性が高い。
- 衛星直結・DX・データセンターなど新ドライバーが複線展開。
リスク
- 料金政策・競争再燃でARPU頭打ちの可能性。
- CAPEX回収期間の長期化や新規事業のマージン希薄化。
- ローソンの投資回収は小売環境に依存。
- 短期的には販促費増などで四半期ブレ発生(26/3期1Qに示唆)。
まとめ
KDDIは「ディフェンシブ×成長」を財務で実証する大型株です。通信コアの安定に、金融・エネルギー・ローソン・DXが利益厚みを与え、衛星データ直結で社会的意義と差別化を同時に確立。増配と4,000億円の買戻しはEPS重視の資本効率ストーリーとして妥当性が高く、長期の再現性に優れます。短期の振れを許容できる投資家にとって、“コア+α”の主力候補と言えるでしょう。
出典・参考リンク(一次情報中心)
免責事項:本記事は情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資はご自身の判断でお願いします。
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