本ランキングは、各社の公表資料・指数提供会社・配当データベース等をもとに、「連続して前年より配当を引き上げた年数」で集計しています(=配当王含む)。同率は企業名のアルファベット順に並べています。
ランキング:米国株・連続増配年数(最長→短)
2025年は、物価の粘着性・関税不確実性・景気減速懸念の中で、増配ペースの鈍化が話題となっています。他方で配当王の多くは、むしろ着実に増配を継続。短期の金利低下観測が強まれば、長期の増配履歴を持つディフェンシブ銘柄は再評価が進みやすいフェーズです。
最新データで「今どの銘柄が最も長く増配を続けているか」を一望できるように整理しました。
※年数は2025年8月24日判明ベース。タイはアルファベット順。SectorはGICS準拠の大分類。
順位 | 企業名 | ティッカー | セクター | 連続増配年数 | 補足(直近増配など) |
---|---|---|---|---|---|
1 | American States Water | AWR | Utilities | 71年 | 2025年7月の増配で更新 |
2 | Dover | DOV | Industrials | 70年 | 2025年8月増配で70年到達 |
3 | Procter & Gamble | PG | Consumer Staples | 69年 | 2025年4月に増配 |
4 | Parker-Hannifin | PH | Industrials | 69年 | 2025年8月に2桁増配 |
5 | Emerson Electric | EMR | Industrials | 69年 | 配当王の老舗 |
6 | Genuine Parts | GPC | Consumer Discretionary | 69年 | 2025年2月増配 |
7 | Northwest Natural | NWN | Utilities | 69年 | 公益の典型的な配当王 |
8 | Cincinnati Financial | CINF | Financials | 65年 | 2025年2月増配 |
9 | Johnson & Johnson | JNJ | Health Care | 63年 | 2025年4月増配 |
10 | Coca-Cola | KO | Consumer Staples | 63年 | 2025年2月増配 |
11 | Lancaster Colony | LANC | Consumer Staples | 62年 | 食品の隠れた配当王 |
12 | Nordson | NDSN | Industrials | 61年 | 24年も二桁増配 |
13 | Farmers & Merchants Bancorp | FMCB | Financials | 60年 | 地方銀行の雄 |
14 | Hormel Foods | HRL | Consumer Staples | 59年 | 食品ブランド群の底力 |
15 | Tootsie Roll Industries | TR | Consumer Staples | 59年 | 現金+株式配当の伝統 |
16 | California Water Service | CWT | Utilities | 58年 | 2025年1月に増配 |
17 | Federal Realty Investment Trust | FRT | Real Estate | 58年 | REIT随一の記録 |
18 | Stanley Black & Decker | SWK | Industrials | 58年 | 2025年7月に増配 |
19 | Commerce Bancshares | CBSH | Financials | 57年 | 2025年も連続更新 |
20 | Stepan Company | SCL | Materials | 57年 | 化学の堅実王者 |
21 | H.B. Fuller | FUL | Materials | 56年 | 接着剤グローバル |
22 | ABM Industries | ABM | Industrials | 56年 | BtoBサービスで積み上げ |
23 | Black Hills | BKH | Utilities | 55年 | 公益で業界最長級 |
24 | MSA Safety | MSA | Industrials | 55年 | 2025年5月に増配 |
25 | PPG Industries | PPG | Materials | 55年 | 塗料大手、25年7月増配 |
26 | Target | TGT | Consumer Staples | 54年 | 2025年6月に増配 |
27 | Becton, Dickinson | BDX | Health Care | 53年 | 医療消耗材の王道 |
28 | Kimberly-Clark | KMB | Consumer Staples | 53年 | 紙製品で安定増配 |
29 | Lowe’s | LOW | Consumer Discretionary | 53年 | ホームセンター配当王 |
30 | PepsiCo | PEP | Consumer Staples | 53年 | 2025年も年次増配 |
(注)本表は米国企業を対象。ADRや海外本社・複雑なスピンオフの継承年数は、各社の公式開示に従い、一般的な「配当王」コンセンサスに整合する形で記載しています。
概要
ランキングの大半は、生活必需品・資本財・公益に集中します。
これらのセクターは、①需要の景気感応度が低い、②規模とブランドが価格決定力をもたらす、③規制・設備投資サイクルの読みやすさからキャッシュの可視性が高い、といった構造的理由により、「無理のない増配」を長期にわたって継続しやすい特徴があります。
事業内容と業界動向
生活必需品(Consumer Staples)
PG/KO/KMB/PEP/HRL/TR/LANCなどは、ブランド力とグローバル価格改定の組み合わせで原材料高や為替を吸収。インフレ期はむしろ価格転嫁で増益余地が広がる局面も多く、配当と自社株買いを同時に回せるキャッシュ創出力が強みです。
資本財・素材(Industrials/Materials)
DOV/PH/EMR/NDSN/PPG/SCL/FUL/SWKらは、景気循環でボラティリティはあるものの、事業ポートフォリオの分散と高い後工程サービス収益で下押しを緩和。オペレーティングレバレッジの管理とM&A後の統合力が増配継続のカギです。
公益(Utilities)
AWR/NWN/CWT/BKH は規制下でのレートベース拡大が原資。脱炭素・耐災投資の資本支出計画は長期にわたり可視化され、金利動向の影響はあるものの、設備投資→料金認可→キャッシュ回収のサイクルで安定的な配当成長が可能です。
金融・ヘルスケア・不動産
金融(CINF/FMCB/CBSH)は引当と金利環境の舵取りが鍵。ヘルスケア(JNJ/BDX)は需要安定と高い参入障壁、不動産(FRT)はテナント健全性とバランスシート運営が増配継続の条件です。
SWOT分析(配当王ユニバースの共通点)
強み(S)
- ブランド力・規模の経済・規制資産など、価格決定力と需要の安定。
- 連続増配という経営規律の可視化(資本配分の一貫性)。
- 多角化・グローバル展開によるキャッシュフローの分散。
弱み(W)
- 成熟事業ゆえの高い配当性向(再投資余地が限られる局面)。
- 金利上昇局面でのバリュエーション圧力(ディフェンシブ株の逆風)。
機会(O)
- 構造的インフレ環境での価格改定耐性と名目成長の追い風。
- サプライチェーン再編・エネルギー転換関連の設備投資需要。
脅威(T)
- 規制変更/関税・地政学によるコスト増と需要シフト。
- 消費者動向の変化(健康志向・プライベートブランド台頭など)。
セクター比較:配当王はどこに多いか
配当王は、Consumer Staples/Industrials/Utilitiesの三領域で全体の過半を占めます。ディフェンシブ性と長期資本回収モデルの強さが、複利的な増配履歴に直結していることが見て取れます。
今後の戦略と展望
- 金利低下局面入りなら、安全資産の再評価→配当ディフェンシブの相対優位が戻る可能性。
- 一方で関税・コモディティ価格の振れは、短期的なマージン圧迫リスク。価格決定力があるブランド企業と規制資産の公益に相対的に分がある構図は不変。
- 増配継続基調は維持見通しだが、増配率は企業ごとのマクロ感応度で二極化へ。
投資家にとってのメリットとリスク
メリット
- 長期の配当成長によるインフレ耐性と、配当再投資の複利効果。
- 減配耐性の高さ(実績的に景気後退期も維持)。
リスク
- 高バリュエーション時に購入すると、金利上昇や短期の成長減速で逆風。
- 規制・訴訟・ESG対応コストなどの突発要因。
まとめ
増配の「年数」はゴールではなく、企業文化・事業構造・資本配分の結果です。上位陣はいずれも、景気循環を超えるキャッシュ創出力と、株主還元の規律を備えています。あなたのポートフォリオでも、景気敏感株や高成長株と並べて、複利で効く「配当のカタチ」を設計する——そのための土台として、本ランキングを活用していただければ幸いです。
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