2025年6月期(FY25)は売上約199億ドル・調整後セグメント利益率26.1%と過去最高圏で着地し、航空宇宙セグメントの受注残74億ドルが示す通り、2026年への視界は明るいように見えます。一方で、産業サイクルやOEMの生産リズム、金利・為替といった変数も無視できません。
本記事は事業構造→競合→市場→財務→リスクを順に深掘りしていきます。
分析対象の概要
セクター:資本財(モーション&コントロール)
ティッカー:NYSE: PH
売上規模:FY25 約199億ドル(速報ベース)
事業体制:2セグメント(Diversified Industrial/Aerospace Systems)
配当履歴:四半期配当を301期連続で実施、増配は69年連続の配当王クラス
ビジネスモデル:多品種・高付加価値コンポーネントとアフターマーケット(MRO)を軸に、景気耐性と高マージンを両立
3C+リスク分析
Company(自社の事業内訳)
FY25はDI(産業)とAerospace(航空宇宙)の二本柱です。
Aerospaceは商用・防衛のOEM/アフターが拮抗し、FY25通期で売上約62億ドル、受注残74億ドルに到達し、高採算のアフターマーケット比率が利益を下支えしています。
DIは一部ディベストの影響で売上は横ばい〜微減局面も、値上げとミックス改善で利益率は堅調です。
Competitor(競合)
航空ではRTX、Safran、Honeywell、Moog、Woodward等、産業側ではEaton、Emerson、Bosch Rexroth、SMC(空圧)などと競っています。近年のセグメント利益率レンジ比較は以下の通り。
企業 | セグメント利益率(目安) | 補足 |
---|---|---|
Parker-Hannifin | 26%前後(FY25調整後) | 航空アフター+DIのMROで高水準を維持 |
Eaton | 約23.9%(25年Q2) | 電力×データセンターが牽引 |
Honeywell | 23.2〜23.6%(25年ガイダンス) | 分散ポートフォリオで安定 |
Rockwell Automation | ~20%(25年通期目標) | ソフト×オートメ比率高いが短期変動あり |
Customer(顧客・需要)
- 商用航空の整備需要:稼働率正常化でアフターが伸長。
- 防衛:在庫積み増し・更新需要で底堅い。
- 産業:オフハイウェイ/搬送/プロセスで電動化・省エネが継続テーマ。
Risk(主要リスク)
- 航空OEMの生産リズム変調(品質・認証・サプライチェーン)
- 景気感応度(DIの需要鈍化)、為替・金利
- M&A実行・統合リスク(Curtisのクロージングとシナジー顕在化)
SWOT分析
Strengths(強み) |
|
---|---|
Weaknesses(弱み) |
|
Opportunities(機会) |
|
Threats(脅威) |
|
財務分析(PL / BS / CF / 株主還元)
PL(損益)
- FY25売上約199億ドル、調整後セグメント利益率26.1%。
- 航空宇宙は通期売上約62億ドル、受注残74億ドルで高採算を維持。
BS(貸借)
大型買収(Meggitt)後も、強いキャッシュ創出によりレバレッジは低下基調。FY26も保守的な投資配分の中で、設備投資・研究開発・選択的M&Aをバランス運用。
CF(キャッシュ)
- FY25の営業CFは約38億ドル、フリーCF約33億ドル(売上比16%台)と高水準。
- FY26ガイダンスでもフリーCF30〜34億ドルのレンジを掲示。
株主還元
- 配当王:四半期配当実施は301期連続、増配は69年連続。
- 自己株式の取得枠も更新し、成長投資と還元の両立を継続。
セクター比較(収益性×循環耐性×変革力)
- Parker:26%台の調整後セグメント利益率。航空アフターとDIのMROで循環耐性が厚い。Curtis買収で電動化の「制御×動力」縦統合が進展。
- Eaton:電力×データセンターの構造成長で23.9%。ただし電力偏重。
- Honeywell:分散ポートフォリオで安定、23%台前半のセグメントマージンをガイド。
- Rockwell:オートメ化のサイクル影響を受けやすく、通期~20%目標。
投資家にとってのメリットとリスク
メリット
- 高収益×強CF:FY25の26.1%に象徴される構造的な利益率と、FCF 30億ドル超の創出力。
- 航空宇宙の見通し:受注残74億ドルで中期の利益成長に“滑走路”。
- 電動化の非線形オプション:Curtis買収でオフハイウェイEV/ハイブリッド等のシステム提案力が加速。
リスク
- 航空OEMの生産変動が短期ボラティリティを増幅。
- DIの景気感応度・為替・金利。
- M&A統合(承認・クロージング・シナジー)の不確実性。
まとめ
Parkerは「景気に振られにくい高収益複合体」として評価できます。
核心は次の4点—①事業分散とアフターの厚み、②航空宇宙の高採算とバックログ、③Win Strategy™の改善文化、④電動化の縦統合。
FY26ガイダンス(売上+2〜5%、調整後EPS28.40〜29.40ドル、同利益率26.3〜26.7%)は保守的だが実現性が高いロードマップに見えます。短期ノイズはあれど、中期では「利益率の質」の改善で再評価余地が残る、というのが本記事の結論です。
コメント