最終更新:2025-09-10(JST)
この記事は新興国関連の代表的なETFに関して「どれを選べば失敗しにくいと考えられるか」という点についてまとめます。
まず用途別の最適解→つぎに候補ETFの比較表→最後にそのまま使える組み方の順で整理していきます。
用途別の“最適解”
- 王道・これ1本 IEMG(iShares Core MSCI Emerging Markets IMI)…超低コストかつ小型まで含む広域カバー。
- 超低コスト代替 VWO(Vanguard FTSE Emerging All Cap)…コスト最重視派。仕様はFTSE系。
- 中国を分離 EMXC(iShares MSCI EM ex China)…新興国は持ちたいが中国は別枠で管理したい人向け。
- 小型厚め IEMGコア+EEMS(EM Small Cap)を5–10%サテライト。
- ESG考慮 ESGE(iShares ESG Aware MSCI EM)…市場に近づけつつESGで微調整。
- 高配当 DEM(EM高配当)/DGS(EM小型配当)…“味付け”として。
- 因子×アクティブ AVEM(Avantis)/DFAE(Dimensional)…小型・バリュー・収益性を低コスト域で傾斜。
- EM債 EMB(USD建て)/EMLC(現地通貨建て)…株のボラ調整や通貨分散に。
まずは「中国を分けるか」だけ決めれば8割方は終わりといえます。次に小型を厚くするか、ESG/配当/因子を足すかを選ぶだけ。
代表ETFの“意味がある”比較表
用途 | ティッカー | 指数/戦略 | 小型株 | 中国の扱い | 経費率 |
---|---|---|---|---|---|
広域コア | IEMG | MSCI EM IMI | 含む | 含む | 0.09% |
広域コア(代替) | VWO | FTSE EM All Cap | 含む | 含む | 0.07% |
超低コスト代替 | SCHE | FTSE Emerging | 仕様次第 | 含む | 0.07% |
超低コスト代替 | SPEM | S&P Emerging BMI | 仕様次第 | 含む | 0.07% |
ex-China | EMXC | MSCI EM ex China | 限定的 | 除外 | 0.25% |
ESG傾斜 | ESGE | MSCI EM(ESG Aware) | 概ね含む | 含む | 0.26% |
小型特化 | EEMS | MSCI EM Small Cap | 小型のみ | 含む | 0.73% |
高配当 | DEM | WisdomTree(高配当) | なし | 含む | 0.63% |
高配当×小型 | DGS | WisdomTree(小型配当) | 小型 | 含む | 0.58% |
因子×アクティブ | AVEM | アクティブ(小型/バリュー/収益性) | 厚め | 含む | 0.33% |
因子×アクティブ | DFAE | アクティブ(コア×因子) | 厚め | 含む | 0.35% |
EM債(USD建) | EMB | J.P. Morgan USD EM Bond | – | – | 0.39% |
EM債(現地通貨) | EMLC | J.P. Morgan GBI-EM | – | – | 0.30% |
※ 経費率・仕様は執筆時点の公表値の目安です。変更される可能性があるため、購入前に必ず各運用会社サイトや目論見書で最新をご確認ください。
2025年の“地図の変化”(押さえるべき背景)
- ex-Chinaの低コスト化:超低コスト帯でのex-China選択肢が広がり、コア並みコストで地域配分を自分で決めやすく。
- 中国比率は指数・時期で変動:MSCI/FTSEでも目安は変わる。重さが気になるならex-Chinaで分離が合理的。
- フロンティア単独は縮小傾向:流動性・実装の課題から、新興国一本で十分な場面が増加。
- コスト競争は継続:SCHE/SPEMなど0.07%帯が一般化。低コスト・広域をコアに、テーマや因子はサテライトで足す二層構造へ。
日本投資家向け:東証で“円建て”に寄せたい場合
1658(iシェアーズ・コア MSCI 新興国株 IMI)
概念的にはIEMGの東証版に近い立ち位置。信託報酬は0.23%以内(目安)。
1681(上場インデックス 海外新興国株式 MSCI EM)
信託報酬は0.264%程度(目安)。どちらも為替ヘッジなしが基本。
※ 米国籍ETF(IEMG/VWOなど)と日本籍ETFでは税・分配の扱いが異なります。証券会社の資料で必ずご確認ください。
失敗しない“選び方の順番”
- 中国を分離したいか? → Yes:EMXC(+必要なら中国ETFを別枠)。No:IEMG/VWOなどAll-in-one。
- 小型を厚くしたいか? → IEMG(IMI)でOK。さらに厚くならEEMS 5–10%をサテライト。
- ESG/配当の好みは? → ESGE or DEM/DGSを“味付け”。
- 因子で超過リターンを狙うか? → AVEM/DFAEを少量。
- 株と債券の比率は? → EM債はEMB(USD) or EMLC(現地通貨)で性格が大きく異なる。
そのまま使える組み方(3つのモデル)
A. 王道一本化(手間ゼロ)
IEMG 100%(コア)。超低コスト/広域/小型込み。積立に最適。
B. 中国を分離管理
EMXC 80–90%(コア)+中国ETF 10–20%。情勢に応じて比率調整しやすい。
C. 小型&因子を少し足す
IEMG 85–90%+EEMS 5–10%+(好みでAVEM/DFAE 5%)。
インカム志向なら、A/B/CいずれにもDEMやDGSを合計10–20%以内で追加。ボラや偏りを見て微調整。
よくある疑問(超要約)
Q. IEMGとVWO、どっちにすべき?
A. どちらも小型を含む広域。コスト最重視ならVWO(0.07%)、小型の確実な取り込み・実装のわかりやすさならIEMG(IMI・0.09%)。長期の差は積立継続×総コストで決まりやすい。
Q. ex-Chinaは今も有効?
A. 「中国の比率を自分で決めたいか」が論点。比率の重さが気になる、将来の可変が欲しいならEMXCなどで分離が合理的。
Q. EM債はどれを選ぶ?
A. EMB(USD建)は金利・クレジットが主リスク、EMLC(現地通貨)は為替が主リスク。狙い(ボラ調整 or 通貨分散)で選択。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。手数料・指数仕様・構成国・税制は変更される可能性があります。購入前に必ず各運用会社の最新資料(目論見書・KID等)をご確認ください。投資判断はご自身の責任で行ってください。
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