【2025版】Nucor(NUE)徹底分析|電炉覇者の強みと将来性、次の一手

米国株

更新日:2025年9月11日

2025年、Nucorは関税再強化および国内需要の底堅さの板挟みになっています。
2024年売上$307億、純利益$20億。2025年2Qは売上$84.6億、EPS$2.60と持ち直し、稼働率は85%まで回復。低炭素・高機動の電炉モデルを軸に、データセンター/送電網/インフラに向けた需要の取り込みを強めています。
この記事では、構造・理由まで掘り下げ、投資家にとっての妙味と落とし穴を整理します。
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分析対象の概要(セクター・規模・ビジネスモデル)

Nucorは米国最大の電炉(EAF)メーカーで、Steel MillsSteel ProductsRaw Materials(スクラップ/DRI)の3セグメントで垂直統合。
2024年の対外売上はミル$187億、製品$101億、原材料$19億、合計$307億。純利益は$20.27億、希薄化EPS$8.46。CO2強度はスコープ1–3合算で0.76t-CO2e/鋼トンと、世界平均(約1.9)や統合製鉄平均(約2.3)を大きく下回ります。

2025年2Qは売上$84.6億、セグメント別税引前利益はミル$8.43億、製品$3.92億、原材料$0.57億。平均販売単価は前期比+8%と改善し、電炉の機動力が収益回復を後押ししました。
資金面では現金同等物$24.8億、未使用のコミットメント枠$22.5億、信用格付けは北米鉄鋼で最上位帯(S&P/Fitch A-、Moody’s Baa1)。

3C+リスク分析(自社・競合・市場+リスク)

Company:自社の事業内訳と成長投資

  • 電炉×下流製品の二段構え:電炉ミルでコスト/炭素優位を確保し、デッキ/ジョイスト/建材・HSS・金属建屋など下流でマージン安定化。
  • 成長投資:ウェストバージニア州Apple Groveの新シートミル(総投資約$35–40億規模、能力300万t)。EAF初湯は2026年初見込みとの設備ベンダー公表もある一方、2027年稼働とする地元報道もあり、最新では26–27年レンジでみるのが妥当。
  • 市場開拓:データセンター向け構造材・金属建屋、送電網強化(T&D)需要、エネルギー・パイプ向けにプレート/ラインパイプ品質の内製化(ブランデンバーグはEBITDA黒字化)。

Competitors:競合(STLD/CLF/海外勢)

  • Steel Dynamics(STLD):2024年売上$175億、純利益$15億。2025年2Qは売上$46億、純利益$2.99億。NUE同様EAF主軸でコスト/炭素優位。
  • Cleveland-Cliffs(CLF):統合製鉄中心。2024年売上$192億$7.08億の最終赤字。2025年2Qは調整後EBITDA$0.97億へ改善も、損益はなお不安定。
  • 海外勢:日鉄のU.S. Steel買収が2025年6月に完了。米国内の統合製鉄の再編は、EAF王者NUEにとって価格形成/需給に新たな変数。

Customer/Market:需要ドライバー

  • 米国EAFシェア:米国粗鋼の約70%はEAF。スクラップ循環と需要地近接のコスト優位が続く。
  • テーマ別需要:データセンター新設床面積は2024–26年で+50%想定。送電網・再エネ・LNG/パイプラインも追い風。
  • 通商政策:2025年6月以降、鉄鋼・アルミ関税が50%に倍増(原則全相手国)。安価輸入の抑制と価格下支えが見込まれる一方、報復/迂回の不確実性も。

Risks:主要リスク

  • マクロ/価格:HRCなど鋼材価格のサイクル。建設/設備投資の減速でマージン圧迫。
  • 政策:関税の再変更、例外規定、為替。政策ドライブが逆回転するとバリュエーション調整。
  • プロジェクト:WV新ミルの工期・コスト超過(26→27年シフトの可能性)。
  • 原料:プライムスクラップのタイト化、電力コスト上昇。

SWOT分析

領域 ポイント
Strengths 電炉×下流の垂直一体/CO2強度0.76の低炭素優位/強固なBSとA-格付/稼働率の立ち上がりが速い
Weaknesses 自動車級・厚板の一部で原料(DRI/高品質スクラップ)確保に制約/市況連動性は不可避
Opportunities データセンター/送電網/インフラ更新、再エネ・LNGパイプ、国内回帰と関税バリア、Econiq等のグリーンスチール・プレミアム
Threats 関税の政策反転、迂回輸入、景気後退、WV新ミル立ち上げ遅延、スクラップ需給ひっ迫

財務分析(PL / BS / CF / 株主還元)

PL:収益性の現状

2024年の売上$307億(前年比-11%)、対外出荷2,476万t(-2%)。純利益$20億、純利率6.6%。2025年2Qは営業モメンタムが改善し、平均販売単価は前期比+8%、セグメント合算の税引前利益は$8.99億。成長投資の立ち上げコスト(2Qは$1.36億)を吸収しながら利益回復を進めています。

BS:安全余力と投資余地

現金等$24.8億、未使用コミット枠$22.5億。ネットD/Eの落ち着きと投資余地に加え、信用力(A-/Baa1)が調達コストを抑制。大型プロジェクトを複線管理できる資本力はセクター内でも希少です。

CF:投資と還元の両立

2024年のCAPEXは$32.9億。2025年上期の自社株買いは約400万株(平均$123.75)を実施、7月5日時点の残枠は$6.06億。配当は四半期$0.55209期連続支払いを更新。

競合と並べた定量比較

項目 NUE STLD CLF
2024売上 $307億 $175億 $192億
2024最終損益 $20.3億 $15.0億 -$7.08億
2025年2Q売上 $84.6億 $46.0億 $49.3億
2025年2Q損益/EPS等 EPS $2.60 EPS $2.01 調整後EBITDA $0.97億
CO2強度(参考) 0.76/t EAF中心 BF/BOF中心

注:各社の単位・指標は公表値に基づき要約。

セクター比較(なぜ電炉が勝ちやすいのか)

世界全体ではBF/BOFが約70%を占める一方、米国はEAFが約70%。EAFはスクラップ循環と地域近接でキャッシュコスト/リードタイム/炭素のいずれも有利です。Nucorはさらに下流製品を抱え、循環材の価格変動をマージンで緩衝。2025年の関税50%は輸入圧力を和らげ、国内投資(データセンター、送電網、エネルギー)と相まって、EAF勢に相対優位をもたらします。

一方で、スクラップの質・量や電力価格はボトルネックになり得ます。NucorはDRIや原料調達を含めた縦の統合でこれを緩和し、低炭素プレミアム(Econiq等)を武器に高付加価値の受注を積み上げています。

投資家にとってのメリットとリスク

【メリット】

  • 構造優位:電炉×下流の二段ギアでサイクル耐性が相対的に高い。
  • 政策後押し:関税強化と国内製造回帰で価格/需給の下支え。
  • 低炭素プレミアム:0.76 t-CO2e/鋼tの実績とネットゼロ認証で選好されやすい。
  • 資本配分:配当継続+自社株買いの機動性。格付けA帯で調達有利。

 

【リスク】

  • サイクル・マージン:シート/厚板価格の調整局面で利益弾力が逆回転。
  • WV新ミル:26→27年シフトの可能性。立上げコストの長期化。
  • 政策不確実性:関税例外・他国報復・政局で前提が崩れるリスク。
  • 原料・電力:プライムスクラップ逼迫、電力価格上昇。

中期(2–3年)は強気寄り。関税+国内投資の循環でミル稼働と下流マージンの底堅さが続く見立てです。一方、短期(数四半期)は価格調整やWV新ミル前の立上げ費用で振れやすく、分割エントリー+押し目買いを前提にリスク許容度でサイズ調整が無難です。

2024年後半~2025年の価格調整局面でも、Nucorは2Qに稼働率85%へ回復。過去サイクルでも、EAF勢は価格反発局面での立上げの速さが収益改善を先導してきました。

まとめ

2025年は、政策(関税50%)投資テーマ(データセンター/送電網/エネルギー)が同時進行する年です。
NucorはEAFの低炭素・高機動の利点に、下流製品と強固なバランスシートを組み合わせ、サイクル対応力を高めています。WV新ミルのタイムラインは26→27年レンジを見込み、ここが最大の執行リスクである一方、立上げ後は内陸の高付加価値シート供給で収益力の再レベル化が期待できます。
NUEは「構造優位×政策追い風×成長投資」を兼備した米国鉄鋼のコア銘柄といえます。短期の価格ノイズには分割で臨み、中期での再評価を狙う戦略が機能しやすいと考えます。

参考資料・出典

  • Nucor 2024 Annual Report(売上内訳・利益・EPS・出荷トン):
    PDF
  • Nucor Q2 2025 決算リリース(2Q業績/稼働率/還元):
    NewsPresentation

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