【2025版】新興国ETF:SPEM徹底分析|低コストで新興国の“素顔”を掴む

ETF

2025年の新興国は「中国の揺り戻し × インド・台湾の構造成長 × エネルギー資源国の再評価」が重なり、指数全体の押し上げが目立ちます。代表ETFのYTD(年初来)リターンは二桁台に乗せ、注目度が再燃。
なかでもSPEM(SPDR Portfolio Emerging Markets ETF)は、超低コストで広く・素直に“新興国の地肌”を取れるコアETFです。

本記事では、単なるスペック紹介にとどまらず、指数設計と国別配分がリターン源泉にどう効いてくるのかを掘り下げます。
SPEMはS&PのEmerging BMIをトラックし、経費率0.07%AUM約137億ドル(2025/9/10時点)という規模とコストのバランスが魅力です。分配は年2回で、最新YTDの成績も堅調です。

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分析対象の概要

  • 正式名称:SPDR® Portfolio Emerging Markets ETF
  • ベンチマーク:S&P Emerging BMI(大型・中型・小型をフルカバー)
  • 経費率:0.07%
  • 純資産総額(AUM):約137億ドル(2025/9/10)
  • 保有銘柄数:2,963(2025/9/10)
  • 分配頻度:半期(年2回)
  • 直近の配当実績の一例:2025/6/23に分配(過去実績)
  • 国別上位(2025/6/30):中国30.37%、インド21.62%、台湾20.55%
  • セクター上位(同日):金融23.41%、情報技術20.73%、一般消費財12.70%
  • 上位保有:TSMC(約9.2%)、Tencent、Alibaba、HDFC Bank ほか

S&P Emerging BMI は「投資可能な新興国全域の時価総額加重」というシンプル設計。指数の“癖”が少なく、国・業種の実勢をそのまま写すため、コア保有に適します。

3C+リスク分析(自社/競合/市場+リスク)

自社(=ファンド)内訳と“設計思想”

SPEMは広さ(Large/Mid/Small)を重視し、中国・インド・台湾の三極が約7割を占めます。
結果として、半導体(TSMC/MediaTek/鴻海)やインド民間銀行/ITサービス、中国のプラットフォームがコア・ドライバーになりやすい構造です。
セクターは金融×ITの二枚看板(計44%弱)で、金利サイクルやAIサプライチェーンの恩恵を受けやすいプロファイルです。

競合(IEMG / VWO / EMXC など)

  • IEMG(iShares Core EM IMI):経費率0.09%、AUM約1,050億ドル規模。MSCI方式で韓国を「新興」に含めるため、Samsungなど韓国勢のウエイトがSPEM/VWOより高くなりやすい。
  • VWO(Vanguard FTSE EM All Cap China A含む):経費率0.07%。FTSE方式で韓国は「先進」扱い、中国・台湾・インドのウエイトが厚い点でSPEMと似る。
  • EMXC(iShares EM ex-China)中国を除外するテーマ型。経費率0.25%と高めだが、中国リスクを切り離したい投資家に人気がある。2025年はVanguardが“ex-China” の新ETFを申請し、潮流の存在感が増した。

補足:韓国の扱い
S&PとFTSEは韓国を原則「先進国」に分類、MSCIは依然「新興」。この違いがIEMGとSPEM/VWOの性格差(IT色の出方、ボラティリティやバリュエーション)を生みます。

市場(構造ドライバー)

  • AIサイクル:先端半導体・OSAT・EMSが厚い台湾がけん引。
  • 人口・所得の“量”:インドの銀行・消費が順風。
  • コモディティ価格:ブラジル等の資源国が相対的に底堅い。

こうした構造×循環の重なりが、2025年のYTD二桁という地合いの背景です。

リスク

  • 中国の政策・ガバナンス:ウエイト約30%と大きく、規制・地政学の波を受ける。
  • 為替:新興通貨のボラティリティは円建て投資家の体感リスクを増幅。
  • 指数差韓国の有無などベンダー差で長期リターンが乖離し得る。
  • 流動性:SPEMの30日中央値スプレッド0.02%と良好だが、ストレス局面では乖離拡大に注意。

SWOT分析

Strengths(強み)

  • 超低コスト0.07%、指数の素直さ=コアに据えやすい
  • 国・規模とも分散(約3,000銘柄)。単一国のショックを緩和

Weaknesses(弱み)

  • 中国30%前後の影響度は高い。政策・規制のヘッドラインでぶれやすい。

Opportunities(機会)

  • AIサプライチェーンの長期化(台湾/インドの設備・人材集積)。
  • 資源国・中東(サウジ等)の国家投資・民営化の進展。

Threats(脅威)

  • 米金利の上振れ→新興通貨と外資流出のダブルパンチ。
  • 地政学(台湾海峡、中東、国境紛争)によるサプライ寸断

構成分析

  • コスト:SPEM 0.07%/IEMG 0.09%/VWO 0.07%/EMXC 0.25%。SPEMは最廉価帯で、長期ほど効く“確定リターン”を上乗せ。
  • 分配:SPEMは半期分配直近12か月分配利回り2.51%、30日SEC利回り2.40%。期日集中しやすい点は再投資設計で配慮。
  • 流動性30日中央値スプレッド0.02%プレミアム/ディスカウント0.02%と効率的な市場形成。AUM約137億ドルで必要十分。
  • トラッキング:月次で指数との差は良好サンプリング運用だが、長期では低コストが寄与。

セクター比較(SPEM vs. IEMG/VWO)

  • SPEM×VWO韓国除外という点で近く、中国・台湾・インドの三極がウェイトの柱。半導体+銀行+プラットフォームの“三層構造”で成長ドライバーが分散。
  • IEMG韓国を含むMSCI方式のため、エレクトロニクス(韓国)+半導体(台湾)の“IT濃度”が相対的に高まりやすい。ボラティリティやファクター露出が異なる点に留意。

投資家にとってのメリットとリスク

メリット

  • 低コスト・広範囲で“新興国ベータ”を効率取得。
  • AI・人口・資源三つの成長物語に一発でアクセス。
  • 指数の癖が小さい→戦略ポートフォリオの土台に置きやすい。

リスク

  • 中国の一国支配度(~30%)と政策・地政学。
  • ベンダー差(韓国の扱い)による競合ETFとの乖離
  • 円投資では為替ヘッジの有無で体感リスクが大きく変化。

中国関連ニュースの良否で月次の超過収益が振れやすい一方、台湾半導体・インド金融がボラティリティを相殺し、指数全体は堅調という場面が続きました。こうした“三極分散”はSPEMの設計と相性が良く、YTDの二桁リターン(月次開示ベース)が説明しやすい構図です。

まとめ

SPEMは「新興国をコアで持つ」ための完成度が高い一本です。

  • 理由①:低コスト0.07%…長期で効く“確定差”。
  • 理由②:指数の素直さ…大型〜小型まで広く、国・業種の実勢を忠実に反映
  • 理由③:三極分散…中国のヘッドライン・リスクをインド/台湾の構造成長が相殺しやすい。

一方で、中国の重みに抵抗感があるなら、SPEMを軸EMXC(ex-China)を補助、あるいは中国単独ETFで意図的に配分する“二階建て”も選択肢です。加えて、韓国エクスポージャーを取りたい投資家はIEMG併用で指数ギャップを埋める設計が理にかないます。
潮流としては“ex-China”商品が増えつつあるものの、コアの土台としては、コスト・分散・実勢反映の三拍子が揃ったSPEMをまず据えるのがベターと考えられます。

参考出所(主要)

SPEMの費用・AUM・配分・保有銘柄・気配値情報、YTD等はSSGA公式ページ/Fact Sheet(2025/6/30・9/10時点)、競合の費用・AUMはBlackRock/Vanguardの公式開示、分配実績は配当情報サイト。市場背景として“ex-China”新設のニュース。

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