DGROは後者のど真ん中。5年以上の増配実績や配当性向の上限など“質”に踏み込んだスクリーニングを低コストで実装し、広い分散で安定性も狙う設計です。
金利のピークアウト観測とメガテックの配当が開始した今、あらためてDGROの構造メリットを検証します。
分析対象の概要
| 項目 | 内容 | 時点 |
|---|---|---|
| 運用会社 | BlackRock(iShares) | — |
| 連動指数 | Morningstar US Dividend Growth Index | — |
| 経費率 | 0.08% | 最新目論見書 |
| 純資産残高 | 約346.6億ドル | 2025-10-20 |
| 保有銘柄数 | 397 | 2025-10-20 |
| 分配頻度 | 四半期 | — |
| 12カ月トレーリング配当利回り | 2.03% | 2025-09-30 |
| 30日SEC利回り | 2.16% | 2025-09-30 |
| 10年年率リターン | 13.51%(税引前) | 2025-09-30 |
| 3年β / 標準偏差 | 0.84 / 12.67% | 2025-09-30 |
ETFとしての立ち位置:DGROはルールに合致した「持続的な増配株」を時価総額加重で組み入れ、一本で“配当の質”と“分散”を両立させるコアETFです。
3C+リスク分析
Company(ファンドの特徴)
- 広い分散:保有銘柄は約400(397)。
- 低コスト:経費率0.08%で長期保有に向く。
- プロファイル:3年β0.84/標準偏差12.67%と相対的に低ボラ。
Competitor(競合)
| ETF | 中核ルール | 保有銘柄数の目安 | 経費率 | 利回りの傾向 |
|---|---|---|---|---|
| DGRO | 5年以上の増配、配当性向<75%、上位10%高配当除外、REIT除外 | 約400 | 0.08% | 概ね2%台(成長重視) |
| VIG | 10年以上の連続増配(S&P U.S. Dividend Growers) | 約300前後 | 0.05% | DGROより控えめ |
| SCHD | 配当持続性+品質スコア重視(約100銘柄に集中) | 約100 | 0.06% | 相対的に高め |
| HDV | 高配当×経済的な堀(Moat)等の品質スクリーニング | 70〜80前後 | 0.08% | 高配当志向 |
Customer(市場・投資家ニーズ)
- 「成長×インカム」を同時に取りたい長期投資家。
- 高すぎる利回りを避け、増配の持続性に軸足を置きたい層。
Risk(リスク)
- 短期の分配金額は高配当ETFに劣る可能性。
- 指数年次リバランスやルール変更に伴う入替・分配の変動。
- セクター偏り(例:金融・IT比率が相対的に高まりやすい)。
SWOT分析
Strengths(強み)
- 0.08%の低コストと広い分散(約400銘柄)。
- 「増配年数」「配当性向上限」「高配当上位の除外」など質の高いルール。
- 相対的にボラティリティが低いプロファイル(β0.84)。
Weaknesses(弱み)
- 利回りは概ね2%台で“即時インカム最大化”には不向き。
- REIT除外により不動産由来のインカムを取りにくい。
Opportunities(機会)
- 大型グロース銘柄の配当開始・増配で「成長×増配」ユニバースが拡大。
- ETFのフィー競争による長期コスト優位の明確化。
Threats(脅威)
- 金利再上昇局面での相対劣後。
- VIGやSCHDなど他戦略が局面優位を保つ期間の長期化。
財務分析(ETF版の置換:成績・分配・規模)
| 期間 | DGRO | ベンチマーク | 時点 |
|---|---|---|---|
| YTD | 12.81% | 12.92% | 2025-09-30 |
| 1年 | 11.01% | 11.11% | 2025-09-30 |
| 3年(年率) | 18.07% | 18.15% | 2025-09-30 |
| 5年(年率) | 13.93% | 14.02% | 2025-09-30 |
| 10年(年率) | 13.51% | 13.60% | 2025-09-30 |
- PL(収益性):10年13.51%は、配当成長×分散の組合せとして十分競争力。
- BS(安全性):AUM約346.6億ドル/397銘柄の広い分散で流動性と安定性を両立。
- CF(キャッシュフロー):12カ月利回り2.03%、四半期分配。高利回り追求ではなく増配の継続性を重視。
- 投資家還元の設計:配当性向上限や高配当上位除外で“配当の無理”を避けるルール。
セクター比較(立ち位置)
DGROは「ディフェンシブ+クオリティ寄り」を土台にしつつ、近年はITセクターの配当開始・増配によって“成長株の増配”も取り込みやすい設計です。
VIGは増配年数のハードルが高く保守的、SCHDは約100銘柄に集中し利回り厚め、HDVは高配当×品質で即時インカムに厚みが出やすい、という関係性です。
投資家にとってのメリットとリスク
メリット
- 低コスト(0.08%)×広い分散(約400銘柄)で長期の“土台”に据えやすい。
- 増配年数・配当性向・高配当上位除外・REIT除外のルールで“配当の質”を担保。
- 相対低ボラ(3年β0.84)で下振れ耐性を確保しやすい。
リスク
- 利回りは2%台のことが多く、生活インカム厚みは別途補強が必要。
- 指数リバランスやルール変更により、期待した分配成長が鈍化する可能性。
- 市場局面次第でVIG/SCHD/HDVが相対優位となる期間がありうる。
まとめ
結論:DGROは「配当額の最大化」ではなく「配当の持続成長と全体最適」を狙う長期コアETF。高すぎる利回りをあえて避け、持続的な増配を重視するルールで、複利の効きを取りにいく設計です。
運用レシピの一例
- 積立の土台をDGRO、リタイア接近でSCHD/HDVをサテライトにしてインカム厚みを加える。
- REIT・国際株を別枠で組み合わせ、相関低減と分配源の多層化を図る。
※本記事は2025-10-21時点の公表データに基づき作成。数値は変動します。投資判断はご自身でご確認ください。


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