「毎月のインカムを厚くしつつ、成長も取りたい」なら、JEPI×JEPQの併用は有力です。
ただし両者はカバードコール(ELN含む)の上値抑制という共通仕様を持ち、為替(USD/JPY)とテック偏重のリスク配慮が必須です。
分配の中身は株式配当+オプションプレミアムが主成分で、水準は相場環境で大きく変動します。
投資判断は期待利回り×ボラティリティ×相場局面の三点で行いましょう。
今回の記事ではその根拠を最新データで整理します。
1. 概要:JEPIとJEPQの“似て非なる”立ち位置
どちらもJ.P.モルガンのアクティブETFで、米大型株に長期ロング+コール売りの仕組み(ELNを含む)により毎月分配を狙います。
違いはベースの株式バスケットとリスク特性です。
| 項目 | JEPI | JEPQ |
|---|---|---|
| ベース領域 | S&P500相当の米大型株に広く分散、低ボラ志向 | Nasdaq-100寄りの大型グロース中心(IT比率高) |
| 運用アプローチ | 現物株+コール売り(ELN活用)で月次インカム | 現物株(グロース高比重)+コール売り(ELN活用)で月次インカム |
| 信託報酬(経費率) | 0.35% | 0.35% |
| 残高(Value of investments) | $41.32B | $30.90B |
| 12ヶ月ローリング分配利回り | 8.35% | 11.27% |
| 30日SEC利回り | 7.17% | 9.45% |
| ボラティリティ指標 | 1年標準偏差 8.62、β 0.56 | (設定来)標準偏差 14.23、β 0.70 |
| 分配頻度 | 毎月 | 毎月 |
分配の“源泉”を理解する:株式配当+オプション・プレミアム
両ETFの分配は、以下2つの合算です。
(1)保有株の配当、
(2)コール売りで得るプレミアム
JEPIの分析資料では、ローリング12か月の平均で配当約1.4%、オプション・プレミアム約7.2%(設定来平均)という内訳が示されます(相場により変動)。
つまり「高分配=高い配当株ではなく、プレミアムの寄与が大きい」点が肝です。
強気相場ではプレミアムが相対的に薄くなり、分配が低下する局面もあります。
リスク整理:上値抑制・ELN・セクター偏重・為替
- 上値抑制:コール売りは強気相場での上昇を頭打ちにします。JEPQは特にテック主導の急騰局面で、QQQ等の純粋な株価上昇に届きにくい特性。
- ELNのカウンターパーティリスク:コール売りの実装に用いられるELN(株式連動債)は、相手方の信用・流動性に晒されます。
- セクター偏重:JEPQはIT比率が約46%と高く(2025/9末)、大型グロースの調整でボラ拡大リスク。JEPIはより分散的でボラ低め。
- 為替リスク(日本の投資家):どちらもドル建て毎月分配。円安は分配の円換算を押し上げ、円高は押し下げます。為替ヘッジは原則なし。
期待利回りの“現実解”と税後の目安
2025/9末の12か月ローリング分配利回りは、JEPI 8.35%、JEPQ 11.27%。仮に50:50で併用すると、粗利回りは約9.8%のブレンド(単純平均)になります。
日本在住の個人が米国ETF分配を受け取る際は、一般に米国源泉徴収10%→その後に日本課税(20.315%)がかかるため、ざっくり税後は“グロス×約72%”程度に縮みます。
よって上記ブレンド9.8%なら、税後目安は約7%台。
※分配・為替・税制適用は個人差が大きいため、あくまで概算の参考として扱ってください。
併用ロジック:JEPIで安定、JEPQで成長の“傾き”を付ける
両者は「インカム志向」×「テック成長の取り込み」で役割が分かれます。JEPIはボラ抑制+分散、JEPQは成長寄りで利回り厚め。相場局面での働き方は次の通り。
- 上昇相場(特にテック主導):JEPQの価格・分配が優位になりやすい一方、上値はコール売りで限定。JEPIは堅実にプレミアム収受。
- 横ばい相場:両者ともプレミアム寄与>値上がり益となりやすく、インカムの“安定度”が活きる局面。
- 下落相場:ELN+低β構造の効果で、指数ベンチマークよりはボラ低下しやすいが、株安・プレミアム圧縮で分配も揺れます。
データで観る「性格差」:標準偏差・β・セクター
| 指標 | JEPI | JEPQ |
|---|---|---|
| 標準偏差 | 8.62(1年) | 14.23(設定来) |
| β | 0.56(1年) | 0.70(設定来) |
| 情報技術セクター比率 | 15.5% | 46.2% |
併用の基本配分アイデア(目安)
- 安定インカム重視:JEPI 70% × JEPQ 30% … 価格変動を抑えつつ毎月分配を狙う。
- バランス:JEPI 50% × JEPQ 50% … 分配水準と成長性の中庸。税前ブレンド利回りの目安は約9〜10%(時期で変動)。
- 成長寄りインカム:JEPI 30% × JEPQ 70% … テック相場の果実を取り込みたい層。ただしボラと偏重リスクを許容できること。
いずれの配分でも、コア資産(例:VTI/VOO/全世界株インデックス)を別枠で保有し、JEPI/JEPQはサテライト(インカム特化)として位置づけると、上値抑制の短所を補完しやすくなります。
よくある誤解と対処
- 「毎月◯%がずっと続く」:これは誤解です。プレミアムは相場のボラと水準に依存。公式FSでも“過去の実績は将来を保証せず”と明示されています。
- 「高分配=安全」:分配の多くはオプション由来のキャッシュフロー。株価下落やボラ低下では分配低下・基準価額のドローダウンもあり得ます。
- 「QQQ/VOOの完全代替」:違います。上値を売っているため、長期の価格上昇トレンドを“満額では取り切れない”設計です。
投資家タイプ別:併用の適合度
| タイプ | 適合度 | 示唆 |
|---|---|---|
| 毎月キャッシュフロー重視 | 高 | JEPI厚めでブレを圧縮。JEPQは味付け程度に。 |
| 成長も取りたいインカム投資家 | 高 | 50:50などのバランス配分。相場好転期はJEPQが効きやすい。 |
| 価格リターン重視(上昇取り切りたい) | 中〜低 | カバード構造の上値抑制がネック。VOO/QQQ等をコアに据えてサテライト活用を。 |
| ボラ耐性が低い | 中 | JEPQ比率を抑え、JEPI中心+現金/債券でクッション。 |
まとめ
JEPIとJEPQは、インカムを厚くしつつ株式エクスポージャを保つというニーズにハマる一方、上値抑制・ELN・セクター偏重・為替というリスクの裏返しがあります。
「コア=広域インデックス、サテライト=JEPI/JEPQ」で住み分けを行い、相場環境に応じてJEPIで安定、JEPQで成長寄与をチューニングし、税後・為替まで見た実質利回りで最適化する——これが“併用”の肝です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の商品・投資行動を推奨するものではありません。分配金・利回り・税制・為替は変動します。投資判断は自己責任で行い、必要に応じて専門家へご相談ください。


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