「SAAと応用情報を一気に取りたい」「基本情報とLPICを並行したい」——やる気は素晴らしいですが、2つ同時学習は多くの場合、学習効率・合格確度の両方を下げます。
本記事では失敗例から原因を分解し、現実的に勝ち切るための計画テンプレートまでまとめます。
結論:同時学習は“想像以上に”非効率
- 文脈切替コスト:日ごと・時間帯ごとに科目が変わると、前後の復元に余計なエネルギーがかかる。
- 知識の干渉:似て非なる用語(例:クラウドの権限設計 vs 情報処理のセキュリティ用語)が相互に上書きされ、記憶が曖昧に。
- アウトプット不足:演習〜復習の反復周期が伸び、定着前に次の科目へ移ってしまう。
- 試験日の分散:模試・直前期が重なり、どちらも中途半端な仕上がりになる。
- 燃え尽き:達成感を得る前に疲労が蓄積し、離脱率が上がる。
よくある失敗パターンと対策
失敗例1:どちらも“基礎未満”のまま走り続ける
症状:参考書を並行で読み進めるが、章末問題が解けない/翌週には忘却。
原因:インプット偏重、復習間隔が長すぎる、出題形式に触れていない。
対策:最初の2〜3週は片方に全振りし、セクションテストで7割取れるまで到達。もう一方は「10分の軽い触り(用語カード)」のみに圧縮。
失敗例2:模試の時期がバッティング
症状:週末に模試A→翌日模試B。復習が間に合わず、弱点把握が浅いまま本番へ。
対策:模試〜本試験の復習バッファ(最低1週間)を両資格で確保。重なる場合は片方を延期し、必ず復習→再演習→弱点ノート更新のループを回す。
失敗例3:似ているようで“守備範囲”が違い過ぎる
症状:CCNA+データベース系など、レイヤが離れすぎて相乗効果ゼロ。負荷だけ増大。
対策:並行するなら出題ドメインが部分的に重なる組み合わせに限定(例:基本情報×応用情報、ITIL×PMPの一部プロセス)。それ以外は時系列の“直列”で。
同時学習「しても良い」例外条件
- 主資格(80〜90%の学習比重)+サブ資格(10〜20%)の明確な主従を守れる
- サブ資格が主資格の用語ブースターになる(例:セキュリティ基礎→クラウドのセキュリティ設計)
- 試験日が1か月以上離れている(模試・直前期が衝突しない)
- 週あたり確保学習時間が安定(最低でも平日合計5h+週末6h目安)
組み合わせ評価マトリクス
| 組み合わせ | 相性 | 理由 | 推奨比率(主:サブ) |
|---|---|---|---|
| 基本情報 × 応用情報 | ◎ | 用語・アルゴリズム・マネジメント領域が連続し、相互補強が働く | 80:20(応用を主に) |
| AWS SAA × セキュリティ基礎(一般論) | ◯ | IAM/ネットワーク/可用性の理解にセキュリティ知識が寄与 | 85:15(SAA主) |
| CCNA × データベース系 | △ | レイヤが遠く相乗効果少。並行時は週内で完全に分離運用が必要 | 90:10 |
| Pythonデータ分析系 × 応用情報 | △ | 学習モード(手を動かす実装 vs 広範囲の用語暗記)が衝突 | 90:10 |
勝ち筋の設計:直列×スプリントで合格確度を上げる
原則:直列(Single-Task)+短期スプリント
- 対象を1つに絞る期間を明確化(例:最初の6〜8週間はA資格のみ)。
- 週次サイクル:学習→小テスト→復習→演習→弱点ノート更新を1週間で完結。
- 週末に成果物:過去問ミニ模試(30〜60分)で着地し、スコアとミス分類を残す。
週内の時間配分の例(A資格に集中)
- 月〜木:インプット+章末問題(各45〜60分)
- 金:弱点復習(30分)+ミニ模試(30分)
- 土:解説精読&再演習(60〜90分)
- 日:軽い見直し(30分)+翌週計画
サブ資格の扱い
- 平日どこかで10〜15分の用語カードのみ
- 週末に例題2〜3問だけ触れて記憶を点火
- 主資格合格後に本格着手(直列化)
8週間のモデル学習計画(テンプレ付き)
| 週 | ゴール | 具体アクション | 確認指標 |
|---|---|---|---|
| 1 | 出題範囲の把握 | 公式シラバス精読/全体マップ化/教材選定 | 学習マップ1枚・教材固定 |
| 2 | 基礎の土台づくり | 章末問題で手を動かす/間違い理由を言語化 | 章末70%到達 |
| 3 | 範囲前半の固め | 演習→復習→再演習のループ | 弱点ノート10項目 |
| 4 | 範囲後半の固め | ミニ模試1回+徹底復習 | ミニ模試60%超 |
| 5 | 総合演習① | 過去問1回分+分野別ドリル | 過去問65%超 |
| 6 | 総合演習② | 過去問1回分+タイムマネジメント練習 | 過去問70%超 |
| 7 | 弱点潰し | ミス頻出テーマを3周、捨て問を明確化 | 弱点ノート完走 |
| 8 | 最終調整 | 本番想定演習/睡眠・当日動線確認 | 直前確認チェックリスト完了 |
合格率を下げないためのチェックリスト
- 主資格とサブ資格の比率(80:20)を日程に落とし込んだ
- 模試と本番の間に復習バッファ(≥1週間)を確保した
- 弱点ノートに「誤りの理由」を言語化している
- 「捨て問」を決めて得点設計を済ませた
- サブ資格は用語カード+例題2〜3問に限定した
2つ同時にやりたくなる“心理”への対処
「時間を節約したい」「モチベが高い今まとめて取りたい」という思いは自然です。ただ、一方で合格という成果は“集中の深さ”に比例します。
資格は連続的に取ったほうがトータル期間が短いケースが多く、早く確実にキャリアへ転換できます。
Q&A(よくある質問)
Q1. 仕事が忙しく、毎日30分しか取れません。2つ同時は無理?
原則は直列を推奨します。どうしても並行なら主従を明確にし、サブは「用語カード10分まで」など小さい範囲で進めた方が安心。
Q2. 同時受験割引があっても直列が良い?
割引で浮くコストより、“不合格→再受験”のコストの方が高く付きがちです。
合格確度最優先で計画しましょう。
Q3. どのタイミングでサブに全振りへ切り替える?
主資格の過去問で安定7割が基準といえます。到達後にスイッチしても遅くありません。
まとめ:「2つ同時」は魅力的に見えても、実は回り道をしてしまう可能性が高いです。
直列×スプリントで、一つずつ確実に合格を積み上げましょう。
直列×スプリントで、一つずつ確実に合格を積み上げましょう。


コメント