【2025版】AWS Well-Architected「7本の柱」完全ガイド|EC2・RDS・S3実装例つき

AWS

本記事は、AWS Well-Architected Framework(以下 W-A)の7本の柱(運用上の優秀性/セキュリティ/信頼性/パフォーマンス効率/コスト最適化/持続可能性/回復力)を最新整理し、代表的サービス(EC2 / RDS / S3)での実装例までを一気通貫でまとめた実務ガイドです。

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Well-Architected Frameworkとは

AWSが提供するリファレンスフレームワークで、クラウドの設計・運用における
ベストプラクティスを「7つの柱」として体系化したものです。
システムの信頼性・効率性・セキュリティ・コスト効率・環境持続性・回復力を高水準で両立することを目的とします。

  • 設計原則(Design Principles):各柱で守るべき考え方
  • ベストプラクティス:アーキテクチャや運用への具体的適用
  • W-A Tool:質問票に回答し、リスクと改善提案を可視化

7本の柱(要点サマリ)

① 運用上の優秀性(Operational Excellence)

運用の自動化・標準化・継続的改善でビジネス価値を最大化。

  • IaC(CloudFormation/CDK)、小さな変更の頻繁デリバリ
  • 運用メトリクスの可視化と事後学習(ポストモーテム)

② セキュリティ(Security)

最小権限・暗号化・検出/対応でデータとアクセスを保護。

  • IAMの最小権限、鍵管理(KMS)、Security Hubで統合監視

③ 信頼性(Reliability)

障害や変動に強い設計とテストでサービス継続性を確保。

  • 冗長化、キャパシティ自動化、回復の自動化(Auto Healing)

④ パフォーマンス効率(Performance Efficiency)

適材適所のリソース選定・スケーリングで性能を最適化。

  • Graviton/Nitro、キャッシュ/CDN、Auto Scaling

⑤ コスト最適化(Cost Optimization)

無駄を削減し、支出対効果を最大化。

  • Savings Plans/RI、スポット、コスト可視化とアラート

⑥ 持続可能性(Sustainability)

環境負荷低減とエネルギー効率の高い設計。

  • 省電力CPU(Graviton)、データ最適保管、不要データ削減

⑦ 回復力(Resilience)

想定外の障害・攻撃・負荷にも迅速に復旧できる能力。

  • 影響範囲の分離、マルチAZ/マルチリージョン、DR演習

柱×サービス別の実装例(EC2 / RDS / S3)

① 運用上の優秀性

EC2

  • IaC:CloudFormation/CDKで構成をコード化
  • 継続デリバリ:CodePipeline+CodeDeployで自動デプロイ
  • 可観測性:CloudWatch Logs/Alarms、分散トレース
  • 運用Runbook:Systems Manager Automationで自動化

RDS

  • メンテナンスウィンドウと自動パッチ管理
  • Enhanced MonitoringとPerformance Insights
  • 自動バックアップとリストア手順の定期演習

S3

  • S3イベント+Lambdaでイベント駆動運用
  • CloudTrailでアクセス監査、Configでドリフト検知
  • バケットポリシーはIaC管理で再現性確保

② セキュリティ

EC2

  • IAMロール必須(アクセスキー直書き禁止)
  • 最小開放SG(22/TCPはSSM Session Managerで代替)
  • SSM Patch Managerでパッチ管理

RDS

  • 暗号化(at rest/in transit)、IAM認証
  • 接続元をSGで最小化、公開エンドポイント回避
  • Auroraのデータベース監査ログ活用

S3

  • ブロックパブリックアクセス有効化
  • SSE-KMSでサーバサイド暗号化、キー管理ポリシー整備
  • アクセスはバケットポリシー+IAM条件付きで厳格化

③ 信頼性

EC2

  • Auto Scaling Groupで冗長化
  • マルチAZ配置とELBで単一障害点を排除
  • Status Check Recoveryと自己回復(Auto Healing)

RDS

  • マルチAZ構成で自動フェイルオーバー
  • PITR(ポイントインタイムリカバリ)
  • フェイルオーバー定期演習で手順を検証

S3

  • デフォルトの高耐久性を前提に設計
  • Versioningで誤削除・上書き対策
  • CRR(クロスリージョンレプリケーション)で災害対策

④ パフォーマンス効率

EC2

  • インスタンスタイプ最適化(Graviton/Nitro)
  • ターゲット追従の動的スケーリング
  • ELB+マルチAZでスループット確保

RDS

  • ワークロードに応じたクラス選定
  • リードレプリカで読み込み分散
  • Performance Insightsでボトルネック解析

S3

  • CloudFrontでキャッシュ配信
  • Transfer Accelerationで高速アップロード
  • Intelligent-Tieringで自動階層化

⑤ コスト最適化

EC2

  • Compute Savings Plans/RIの活用
  • スポットの併用(バッチ/柔軟な耐障害要件)
  • 起動/停止のスケジュール自動化

RDS

  • RIで長期稼働コストを圧縮
  • Aurora Serverless等で需要連動課金
  • ストレージ自動拡張で過剰割当を抑制

S3

  • ライフサイクルでGlacier/DAへ自動移行
  • Intelligent-Tieringでアクセス頻度に応じ最適化
  • 未使用バケット/オブジェクトの定期清掃

⑥ 持続可能性

EC2

  • Gravitonで省電力・高効率
  • 業務時間外の自動停止でアイドル削減
  • 再エネ比率を考慮したリージョン選定

RDS

  • Aurora Serverlessによる需要連動
  • インスタンス/ストレージの適正化

S3

  • One Zone-IA / Glacierの適用
  • 不要データ削除ポリシーで保管最適化

⑦ 回復力

EC2

  • マルチAZ/マルチリージョン展開
  • AMI/スナップショット+Elastic Disaster Recovery
  • Fault Injection Simulatorで障害注入テスト

RDS

  • マルチAZ+フェイルオーバー検証
  • クロスリージョン・レプリカでDR設計
  • RunbookをSystems Managerで自動化

S3

  • CRRで地理冗長
  • Versioning+Object Lockで誤削除/ランサム対策
  • 復旧手順の定期演習

実装チェックリスト(抜粋)

  • IaCで全ての変更が再現可能か(手作業の設定を排除)
  • 最小権限が徹底され、鍵/秘密情報はKMS/Secretsで管理されているか
  • マルチAZ構成・自動回復の仕組みを持ち、定期演習しているか
  • 負荷に応じた自動スケーリングとキャッシュ/配信最適化があるか
  • コスト可視化としきい値アラート、Savings Plans/RIの最適化があるか
  • 省電力リソースとデータ保管最適化で環境負荷を抑えているか
  • DR計画(RTO/RPO明確化)と定期的なFIS/ゲームデイがあるか

比較表(ひと目で把握)

EC2 RDS S3
運用上の優秀性 CDK/CFn・CI/CD・Runbook 自動パッチ・EM/PI・自動バックアップ S3イベント駆動・Trail監査・IaC管理
セキュリティ IAMロール・最小SG・SSM接続 暗号化・IAM認証・SG最小化 ブロックPA・SSE-KMS・厳格ポリシー
信頼性 ASG・ELB・自己回復 マルチAZ・PITR・演習 Versioning・CRR
パフォーマンス効率 Graviton/Nitro・AS・ELB クラス最適化・レプリカ・PI CloudFront・TA・I-Tiering
コスト最適化 SP/RI・Spot・停止自動化 RI・Serverless・自動拡張 LCルール・I-Tiering・清掃
持続可能性 Graviton・自動停止・Region選定 Serverless・適正化 One Zone-IA/Glacier・削除方針
回復力 Multi-AZ/Region・EDR・FIS CRリードレプリカ・FO検証・Runbook CRR・Versioning+Lock・DR演習

FAQ

「信頼性」と「回復力」はどう違う?

信頼性は通常時や予測可能な障害への強さ(冗長化・自動回復・容量管理)。
回復力は想定外の大障害や攻撃・広域障害への復旧能力(影響分離、マルチリージョン、DR演習)に重心があります。

まず何から手を付けるべき?

影響が大きいセキュリティの最小権限IaC/可観測性を先に整備。
その上でマルチAZ自動回復コストの見える化を進めるのが効果的です。

オンプレ設計との最大の違いは?

スケール・自動化・実験速度。小さな変更を頻繁にコードで管理し、
実測値に基づく継続改善を回す点がクラウド設計の肝です。

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