「売上CAGR10%」。
決算資料や投資情報サイトでこの数字を見ると、多くの投資家は直感的にこう思います。
「悪くない成長率だ」「安定した成長企業だろう」「長期で持てそうだ」
しかし、CAGR10%という数字だけで投資判断をするのは危険といえます。
本記事では、CAGR(年平均成長率)が10%前後と一見魅力的に見えるにもかかわらず、
投資対象としては「買ってはいけない」企業に共通する構造的な特徴を掘り下げます。
単なる注意喚起ではありません。「なぜダメなのか」「どこを見落としやすいのか」「どう見抜くのか」まで踏み込みます。
なぜ「CAGR10%」は魅力的に見えてしまうのか
まず前提として、なぜ私たちはCAGR10%という数字に惹かれてしまうのでしょうか。
- インフレ率を大きく上回る成長
- 複利効果を考えると長期で大きな差になる
- 「高成長すぎない=安定」という安心感
実際、教科書的には「年率7〜10%成長」は優良企業の目安として語られることも多い。
問題は、その数字が「どのようにして作られたか」を見ない投資家が圧倒的に多いことです。
CAGRはあくまで「結果」であり、「プロセス」ではありません。
ここを見誤ると、10%成長という数字は簡単に罠へと変わります。
買ってはいけない企業①:成長の中身が「値上げ」だけ
最も典型的な罠がこれです。
売上CAGR10%を達成している企業の中には、
販売数量はほとんど増えておらず、価格転嫁だけで成長しているケースがあります。
- 原材料高を理由に値上げ
- インフレ環境による自動的な単価上昇
- 実質的な顧客数・利用頻度は横ばい
このタイプの企業は、インフレが追い風の間は「優良成長企業」に見えます。
しかし、環境が変わった瞬間に成長は止まり、株価も伸び悩みます。
本当に見るべきなのは「数量×単価」のどちらが成長を牽引しているかです。
買ってはいけない企業②:利益CAGRが売上CAGRに追いついていない
次に多いのが、「売上は伸びているが、利益が伴っていない」企業です。
例えば以下のようなケース。
- 売上CAGR:10%
- 営業利益CAGR:3%
- EPS CAGR:ほぼゼロ
一見すると「成長企業」に見えますが、
実態はコスト増・競争激化・値引きによる薄利多売です。
私は過去、このタイプの銘柄で何度も失敗しました。
決算書を読むたびに「売上は伸びているのに、なぜか株価が上がらない」。
後から冷静に振り返ると、
市場はすでに「利益なき成長」を見抜いていたのだと分かります。
買ってはいけない企業③:成長のために資本を食い潰している
CAGRの罠でもっとも危険なのが、このタイプです。
成長率を維持するために、
- 巨額の設備投資
- 継続的なM&A
- 株式希薄化を伴う増資
を繰り返している企業。
売上CAGRは確かに10%。
しかしその裏で、フリーキャッシュフローは慢性的にマイナスになっていませんか?
このタイプの企業は、成長が止まった瞬間に資金繰りが悪化し、
株価は一気に評価を失います。
「成長している」のと「儲かっている」は全く別物だということを、
CAGRは教えてくれません。
買ってはいけない企業④:成熟市場での「無理な10%成長」
もう一つ見落とされがちな視点が、市場環境です。
成熟した市場でCAGR10%を維持している企業は、一見すごく見えます。
しかしその実態は、
- 競合からシェアを奪っているだけ
- 過度な価格競争
- 将来の成長余地が乏しい
というケースが少なくありません。
市場全体が年率2%しか成長しない中で、
特定企業だけが10%成長するには「歪み」が生まれます。
その歪みは、いずれどこかで調整されます。
では、CAGRは使えない指標なのか?
ここまで読むと、こう思うかもしれません。
「じゃあCAGRなんて見なくていいのでは?」
それは違います。ただし“使い方”を間違えなければ、CAGRは極めて強力な指標です。
私が必ずセットで確認するのは以下です。
- 売上CAGR × 利益CAGR
- EPS CAGR × 株式数の推移
- CAGR × フリーキャッシュフロー
- CAGR × 市場成長率
この組み合わせを見たとき、初めてCAGRは「意味のある数字」になります。
まとめ|10%成長に騙されないために
CAGR10%という数字は、決して悪ではありません。
しかし、それは入口にすぎない。
大切なのは、
- なぜその成長が実現できているのか
- その成長は持続可能なのか
- 株主価値に本当に繋がっているのか
を自分の頭で考えることです。
私は過去、「数字がきれい」という理由だけで投資し、
その裏にある構造を見抜けずに後悔した経験があります。
だからこそ断言します。
CAGRは“信じるもの”ではなく、“問いを立てるための道具”だと。
次回の記事では、
「EPS CAGRがなぜ株価と最も連動しやすいのか」を、さらに深く掘り下げます。

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