「社内SE→コンサル」転身の勘所を体系化し、DX加速と内製化シフトのいま、何をどう伸ばせば勝てるのかを具体的に示します。
なぜ「社内SE→コンサル」が有利なのか
ここ数年、社内SEからコンサルタントへのキャリアチェンジを希望する声が急増しています。背景には、DXの加速と内製化(プロダクト志向のIT組織づくり)の広がりがあります。
企業側は内製を進めつつも、アーキテクチャ設計や変革の推進、データ活用の高度化といった
「内製チームだけでは一気に到達しにくい領域」を外部に委ねるケースが増えました。
そこで“現場の泥臭さ”を知る社内SE出身者が評価されやすくなっているのです。
- DX加速:基幹刷新・データ基盤・生成AI活用など大型案件が増加。
- 内製化の壁:要件定義やアーキ設計、EA/ガバナンス強化で外部の知見を欲する。
- 社内SEの強み:業務・運用・情シスの痛点を熟知=現実的な提案と推進に強い。
転身前に磨くべき5つのスキル
① 提案力:課題→価値→実装可能性を一気通貫で語る
コンサルは「良い企画」を作るだけでは不十分。課題の定義・解決策の選択肢・投資対効果・実装/運用の現実性まで一貫して語れなければ刺さりません。
社内SE出身者は運用や制約に明るい分、“通る提案”が作りやすいのが武器です。
- 型:As-Is課題 → To-Be像 → 解決オプション比較(費用/効果/リスク) → 推奨案 → 実行ロードマップ
- 即効トレーニング:プロジェクトの「あるある障害」を3つ選び、各々のTo-Beと実行計画を1枚スライドで作る。
② データ理解力:要件をデータ構造の言葉に落とせるか
DXの肝はデータです。概念/論理/物理データモデルの基本、品質・整合性・ライフサイクルの設計、ETL/ELT、そして可観測性まで見通せると説得力が跳ね上がります。
- 押さえる領域:ER/EER、正規化/デノーマライズ判断、マスタ設計、データ品質(重複・欠損・由来)
- 現場視点:「取れない/遅い/信用できない」データはDXの失敗要因。収集〜活用までの全工程の設計が大事。
③ 業務コンサルティング力:プロセス×ITでボトルネックを解く
要件の裏には必ず業務プロセスがある。BPMNで現状を可視化し、制約条件やKPIを定義したうえで、標準化・自動化・権限統制・内部統制の観点から改善案を組み立てます。
- コア技術:As-Is/To-Beプロセス設計、KPIツリー、現場ヒアリング(VOC)
- 落とし穴:システム改善だけで終えると定着しない。人・組織・運用の設計までがセット。
④ コミュニケーション/ファシリテーション:利害と感情を扱う
大型案件は関係者が多く、利害調整と意思決定のファシリテーションが成否を分けます。論点整理・論点分解・選択肢提示・判断基準の共有が鍵。
- 会議設計:目的→アジェンダ→判断基準→宿題と期限→次アクションの明文化
- 実装術:意思決定ログ(決定事項・根拠・代替案)を1ページで継続管理。
⑤ プレゼン/ドキュメント力:構造が価値を運ぶ
同じ内容でも構成・図解・言葉の設計で伝わり方は激変します。1スライド=1メッセージ、根拠は図表で、結論→理由→具体で流すのが鉄則。
- 最低限の型:サマリー1枚+詳細(課題/解決策/効果/ロードマップ/リスク)
- 運用Tip:社内標準の再利用可能な部品(図・表・テンプレ)を自作して“量産体制”に。
| スキル | 目的 | 成果物の例 | 定量化指標 |
|---|---|---|---|
| 提案力 | 意思決定を動かす | 提案書、比較表、投資対効果試算 | 採用率、決裁リードタイム短縮 |
| データ理解力 | 実装可能性と持続性の担保 | 概念/論理ER、データ品質レポート | 欠損/重複率改善、参照整合率 |
| 業務コンサル力 | ボトルネックの特定と解消 | BPMN、KPIツリー、RACI | 処理時間/コスト/KPI改善 |
| コミュニケーション | 合意形成と推進 | 意思決定ログ、アクションリスト | 未決事項率、宿題消化率 |
| プレゼン/ドキュメント | 理解速度と再現性の向上 | エグゼクティブサマリー、図解 | 承認通過率、レビュー指摘密度の低下 |
実案件の制約下で磨いたアウトプットは、コンサル面接で最も説得力を持ちます(※守秘・匿名化は厳守)。
職務経歴書・面接での打ち出し方(例)
- 一行サマリー:「100人月までの基幹領域でPL経験。アーキ構想と非機能設計を起点に“通る提案”と実装を両立。」
- 成果の定量化:「バッチ時間をX%短縮」「監査対応の工数をY%削減」「障害対応リードタイムをZ%短縮」
- 引き出し:比較表、ER/BPMN、非機能要件パッケージ、意思決定ログの運用術
転職活動でよくあるリスクと注意点
- 「業務理解」抜きの技術偏重:
ツール名の羅列は弱い。業務KPIと意思決定につながる語りを。 - 守秘違反リスク:
成果物は必ず匿名化・再構成。顧客名・数値・画面キャプチャは出さない。 - 提案の非現実性:
運用・監査・セキュリティ制約を無視した絵に描いた餅は即NG。非機能要件を最上流に。 - 経験の抽象化不足:
事例を型に落として横展開可能性を示す(例:比較表→評価軸→重みづけ→推奨案)。 - 面接での“説明会”化:
説明ではなく意思決定を動かす話法(結論→理由→具体、STAR)を徹底。
まとめ:社内SEの現実感は、強力な武器になる
DXと内製化の時代、「現実的に動く解」を設計・提案できる人材が選ばれます。社内SEで積み上げた運用・非機能・業務の感覚は、コンサル側でこそ真価を発揮します。
まずは提案の型と
データ/業務/非機能の三位一体思考を日々の実務で鍛え、成果物をポートフォリオ化しましょう。


コメント