新NISA時代の「新興国(EM)」は、中国の扱い・韓国の区分・配当課税の取り回しで成果が分かれます。
本ガイドは主要6本(EMXC/SCHE/VWO/IEMG/SPEM/DEM)を「指数設計×中国比率×韓国の取り扱い×コスト×配当税務」の軸で一気通貫で整理します。
まずは早見表(指数・中国/韓国の扱い・コスト)
ティッカー | 正式名 | ベンチマーク | 中国の扱い | 韓国の扱い | 直近の中国比率例 | 信託報酬(経費率) |
---|---|---|---|---|---|---|
EMXC | iShares MSCI Emerging Markets ex China ETF | MSCI EM ex China | 除外 | 含む(MSCIは韓国=EM) | —(ex-China) | 0.25% |
SCHE | Schwab Emerging Markets Equity ETF | FTSE Emerging Markets All Cap China A Incl. | 含む(A株一部) | 含まない(FTSEは韓国=先進) | (FTSE系の例)約33% | 0.07% |
VWO | Vanguard FTSE Emerging Markets ETF | FTSE Emerging Markets All Cap China A Incl. | 含む(A株一部) | 含まない | 約33%(例:32.8%) | 0.07% |
IEMG | iShares Core MSCI Emerging Markets ETF | MSCI EM IMI(大型〜小型) | 含む(A株一部) | 含む(MSCIは韓国=EM) | 約27.8%(MSCI IMI) | 0.09% |
SPEM | SPDR Portfolio Emerging Markets ETF | S&P Emerging BMI | 含む | 含まない(S&Pは韓国=先進) | 約30.4%(S&P BMI) | 0.07% |
DEM | WisdomTree EM High Dividend | WisdomTree EM High Dividend | 含む | 含む(独自分類) | 約25.5%(ファンド実績) | 0.63% |
※中国比率は2025年6〜8月時点資料の例示。指数・市場環境により変動します。
なぜ今“構造”で選ぶのか
2025年は主要EM ETFのコストが最安水準に収斂(VWO/SCHE/SPEM=0.07%、IEMG=0.09%)。たとえばMSCIは韓国を新興国として組み入れる一方、FTSE・S&Pは先進国扱いのため、IEMG/EMXCは韓国を含むが、VWO/SCHE/SPEMは含まないという構造差が生まれます。
- MSCI(IEMG/EMXC):韓国=EM、小型まで含むIMIで“裾野”まで拾う(IEMG)。
- FTSE(VWO/SCHE):韓国=先進、A株は段階的組入れ、構成はやや“太め”の大中小。
- S&P(SPEM):韓国=先進。国・セクター配分はFTSEに近似するが、ルール差で微妙なズレ。
中国:比率・規制・ガバナンスの論点
現在の代表インデックスにおける中国ウエイトは、MSCI EM IMI:約28%、FTSE EM(VWOの例):約33%、S&P Emerging BMI:約30%が目安です。EM全体の牽引役である一方、VIE構造や監査アクセス(HFCAA)、当局規制といったガバナンス・政策リスクがパフォーマンスのボラティリティを押し上げる局面もあります。
EMXC(ex-China)はこの中国固有リスクを意図的に外し、台湾・インド・韓国の比重を高めるアプローチです。
国別/セクター重複の見極め方
IEMGとVWOは「広く浅く」似ている一方、韓国の有無と小型株の組入れで乖離が生じます。EMXCはex-Chinaのため、他のEM ETFと重ねると「中国だけ二重に持つ/外す」といった歪みが起きやすく、配分設計に注意が必要です。
- 重複を抑えるコツ:「中核(Core)=IEMG or VWO系」「衛星(Satellite)=EMXC(中国切り出し)or DEM(配当)」と役割を分ける。
- 韓国エクスポージャ:IEMG/EMXCは韓国を含み、VWO/SCHE/SPEMは含まない=先進国ETF(例:VXUS/VEA)との二重計上も要チェック。
- セクター:EM全体は金融・IT・資本財・素材の比重が高く、DEMは金融・エネルギーが厚くなりやすい。
為替・総コスト・配当課税の落とし穴
- 為替:米ドル建てETF→円評価。EM現地通貨×USD×JPYの二重為替が効くため、円高局面は円建てリターンの逆風に。
- 見えないコスト:信託報酬だけでなく、トラッキング差・売買スプレッド・現地課税が実質コストに影響。
- 新NISAの盲点:NISA口座の米国籍ETF配当は日本では非課税だが、米国源泉(条約軽減あり)が残る。NISAでは外国税額控除が使えないため、米国源泉ぶんは戻らない点に注意。
主要6ETFのプロファイルと使い分け
EMXC(MSCI EM ex China / 0.25%)
中国リスクを切り離し、台湾・インド・韓国の“機動力”を高める中核/衛星ハイブリッド。 中国は別枠(個別/テーマ)で能動的に取りたい人向け。- 長所:政策/ガバの固有リスクを排除、地域分散の明確化
- 留意:コスト高め(0.25%)、中国ラリー局面では取り逃し
VWO / SCHE(FTSE EM / 0.07%)
最安クラスの王道EM。韓国を含まない点がMSCI系と最大の差。A株は段階的に組入れ。- 長所:コスト最安、運用規模・流動性が厚い(特にVWO)
- 留意:韓国上振れ局面ではMSCI系に見劣りも
関連記事:【2025年版】新興国ETF:VWO徹底分析|新興国株の“王道”ETF
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IEMG(MSCI EM IMI / 0.09%)
大型〜小型まで網羅し、韓国を含むMSCI“フルセット”。市場の裾野を拾うため、長期のベータ獲得に向く。- 長所:IMIで分散性が高い、規模・情報量が豊富
- 留意:韓国を先進国で保有している場合は二重計上に注意
SPEM(S&P EM BMI / 0.07%)
実質はFTSE系に近い配分。韓国を含まない点はVWO/SCHEと同じだが、指数ルール差で微妙な構成差。- 長所:低コスト、シンプル構成
- 留意:細かな銘柄入替はFTSEと一致しない
DEM(高配当 / 0.63%)
配当重視の“バリュー寄りEM”。中国・台湾・ブラジル・サウジ・南アなどが厚く、金融・エネルギーの比率高め。- 長所:インカム重視、景気持ち直し局面で相対強さ
- 留意:指数がファンダ重視のため、グロース相場では弱含みやすい/コスト高
用途別レシピ(組み合わせ例)
- 中国リスクを抑えつつEMベータ:中核=IEMG 70% + EMXC 30%(相場に応じてEMXCを±)。
- 最安コア:VWO or SCHE 単独。韓国エクスポージャは先進国ETF側で調整。
- インカム寄り:VWO 70% + DEM 30%(景気循環で配分調整)。
- 中印半導体/ITへの感応度を高めたい:IEMG(小型含む) or FTSE系+半導体個別/テーマを別枠で。
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