【金融工学入門】リスクとリターンをわかりやすく解説|期待リターン・標準偏差・相関の基礎

金融工学

金融工学の中心となる概念が「リスク」と「リターン」です。
本章では、期待リターン、分散・標準偏差、リスクプレミアム、シャープレシオ、そして分散投資を理解するために欠かせない「共分散・相関」までを体系的に解説します。

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1. 期待リターンとリスク(分散・標準偏差)

① 期待リターンとは?

期待リターンとは「将来得られる平均的なリターン」のことです。
過去データや確率モデルから算出され、投資判断の目安となります。

  • 期待リターン = 過去データの平均リターン
  • または “各シナリオ × その発生確率” の合計

例:年率リターンがそれぞれ 5%, 10%, -2% の3年間があった場合

期待リターン=(5 + 10 - 2) ÷ 3 = 約4.3%

② リスク(分散・標準偏差)とは?

金融の世界における「リスク」とは「値動きの大きさ(ブレやすさ)」のことです。
その代表的な指標が「分散」と「標準偏差」です。

  • 分散:リターンのバラつきの大きさ
  • 標準偏差:分散の平方根で、実務で最もよく使われるリスク指標

標準偏差が大きいほど値動きが激しく「危険」と判断されます。
逆に標準偏差が低い資産は、安定した値動きをします。

③ なぜリスク指標が重要なのか?

投資は「高いリターンを狙う=高いリスクを取る」構造になっています。
したがって、リスクを知らない投資は「どれだけ危険な道を走っているか分からない」状態と同じです。

  • 高リターンを狙うには、その分の大きな値動きに耐える必要がある
  • 長期投資においてはリスク管理がリターン差に大きく影響する
  • ポートフォリオ最適化の基礎になる

④ 実例:VTI vs VOO vs ハイテク株(QQQ)

具体的な値動きの違いを3つの代表的ETFで比較します。

ETF 期待リターン(長期平均) 標準偏差(リスク)
VTI(米国株式全体) 約7〜8% 約14〜15%
VOO(S&P500) 約8〜9% 約15〜16%
QQQ(NASDAQ100) 約12〜14% 約22〜25%

QQQはハイテク比率が高く高リターンですが、値動きも大きくリスクが高いことが分かります。
「高いリスクをとるほどリターンも上がる」という典型例です。

2. リスクとリターンの関係

① リスクプレミアム

リスクを取る投資家が受け取る“追加のリターン”をリスクプレミアムといいます。
例えば、安全資産(米国短期国債)の利回りが 3% で、株式市場の期待リターンが 8% の場合、

株式リスクプレミアム = 8% - 3% = 5%

リスクのある資産を保有する「見返り」として得られるリターンです。

② シャープレシオ

シャープレシオは「どれだけ効率よくリターンを得たか」を測る指標です。

シャープレシオ = (期待リターン − 無リスク利子率) ÷ 標準偏差
  • 高いほど効率の良いポートフォリオ
  • 同じリターンなら、リスクが小さいほど良い

投資信託やETFの比較によく使われる指標です。

③ 分散投資のメカニズム

異なる値動きをする資産を組み合わせることで、ポートフォリオのリスクは低下します。
これが「分散投資」の基本原理です。

  • 株式と債券
  • ハイテクと生活必需品
  • 米国と非米国株

重要なのは「相関が低い資産を組み合わせる」ことです。
これにより、ポートフォリオの値動きが安定し、同じリターンでもリスクを抑えることができます。

3. 共分散と相関

① 共分散とは?

共分散は「2つの資産が同じ方向に動くかどうか」を表す指標です。

  • 正の共分散:同じ方向に動きやすい
  • 負の共分散:逆方向に動きやすい
  • 共分散が0:関係性が弱い

② 相関(-1 ~ +1 の尺度)

共分散は数値の大きさだけでは解釈しにくいため、より一般的に使われるのが「相関係数」です。

  • +1:完全に同じ方向に動く
  • 0:動きに関連がない
  • -1:完全に逆方向に動く

分散投資では相関が最重要の指標となります。

③ 分散効果の定量的理解

ポートフォリオのリスク(標準偏差)は次の式で表せます。

ポートフォリオ分散 =
wA²σA² + wB²σB² + 2 × wA × wB × 共分散

共分散(または相関)が小さいほど、ポートフォリオ全体のリスクが減少します。
この仕組みが「分散投資が効く理由」です。

④ 相関の計算方法と解釈

相関係数は、統計の標準的な式で算出できます。

相関係数 = 共分散 ÷ (資産Aの標準偏差 × 資産Bの標準偏差)

相関が低い(あるいはマイナス)資産同士を組み合わせることで、同じ期待リターンでもリスクが小さくなり、
より効率的な投資が可能になります。

まとめ

本記事では、金融工学の基礎である「リスクとリターン」について解説しました。

  • 期待リターンは“平均的なリターン”
  • リスクは“値動きの大きさ”で標準偏差で測る
  • リスクを取るほどリターンが期待できる(リスクプレミアム)
  • シャープレシオで効率性を評価できる
  • 分散投資の鍵は「相関を下げる」こと

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