歯磨き粉の代名詞「Colgate」。だが実態はオーラルケア×パーソナルケア×ペットケアを柱に世界200+国で展開する生活必需品大手です。
2024年は売上$20.1Bで過去最高を更新。2025年Q2もオーガニック売上+1.8%と堅調を維持しました。加えて、同社は62年連続増配の配当貴族級。
この記事では、最新決算・競合比較・SWOT・戦略/リスクをまとめ、今CLをどう位置づけるかを短時間で掴めるよう整理します。
なぜ今このタイミングで分析するのか
- 連続増配の更新 2025年に四半期配当を$0.52へ増額(年率$2.08)。増配ストリーク継続で配当の“質”を示した。
- 為替・原材料の逆風 2025年はFX逆風や原材料/関税コストで粗利率が圧迫される局面。Q2の粗利率は60.1%。投資家は価格改定とミックスでの吸収力を注視。
- “プレミアム化”の継続 オーラル・スキン・ペットでの高付加価値シフトが中長期の牽引役。EM市場の回復度合いも注目。
短期はFX/コストでモメンタム鈍化余地も、価格/ミックス改善とブランド力で“下に強い”典型的ディフェンシブ。押し目は分散拾いでのインカム+適度な成長取りを狙える位置にあるといえます。
コルゲートの概要
- ティッカー:NYSE: CL(生活必需品)
- 株価(2025-08-22終値):$85.94
- 時価総額:約$69.5B
- 配当利回り:約2.4%(年率$2.08換算)。
- 配当:62年連続増配・四半期$0.52を継続。
- 売上:$20.1B(2024)/LTM(~2025/6):約$20.0B。
- 事業柱:オーラルケア、パーソナル・ホームケア、Hill’s(ペットケア)。
- 地域はEM比率高め。
事業内容と業界動向
コルゲートは歯磨き粉で世界首位級のシェアを持ち、歯科医推奨のプロ仕様ラインから美白・センシティブまで価格帯別に綿密なラインナップを敷くのが強みです。
ペットではHill’sが高付加価値の療法食・プレミアム領域で存在感。2025年上期は消費者の値頃感回帰が進む中でも、価格/ミックス主導のオーガニック成長を維持。Q2は+1.8%(PLペットの縮小が-0.6ptの逆風)。
- 価格主導:P&GはFY25で有機+2%、ユニリーバはH1 USG+3.4%と、セクター全体で価格×ミックスを梃子に成長を確保。
- 為替影響:ユニリーバH1は為替-4.0%と逆風。CLも地域ミックス上、FX感応度が高い。
- コスト:原材料・包装材・関税などの上昇圧力が続き、粗利率と価格転嫁の均衡が焦点。
SWOT分析
強み(Strengths)
- 世界的ブランド力と歯磨き粉の圧倒的認知・歯科チャネルの厚み。
- プレミアム×イノベーションに強い製品開発力(美白・センシティブ・獣医療連携の療法食など)。
- 62年連続増配の資本政策一貫性と配当の信頼性。
弱み(Weaknesses)
- EM比率の高さゆえの為替逆風影響。
- PLペット縮小の一時的なマイナス寄与(2025年Q2:-0.6pt)。
機会(Opportunities)
- オーラル・ペットの高付加価値化(美白・知覚過敏・療法食)。
- 新興国の中間層拡大と衛生意識の底上げ。
脅威(Threats)
- 原材料・関税コスト上昇、パッケージコストの上振れ。
- 消費者の値頃感回帰によるトレードダウン(サイズ/価格設計での緻密対応が必要)。
競合他社との主要指標比較(2025-08-22基準)
注:規模・会計期が異なるため厳密比較ではなく「位置づけ」把握目的。売上はFY25/H1/TTMの最新公表ベース。
項目 | Colgate-Palmolive(CL) | P&G(PG) | Unilever(UL/ADR) | Church & Dwight(CHD) |
---|---|---|---|---|
時価総額 | $69.5B | $361.6B | $154.6B | $23.15B |
売上規模 | $20.1B(FY2024)/ LTM約$20.0B | $84.3B(FY2025) | €30.1B(H1 2025) | $1.51B(Q2売上) |
直近成長 | Q2 2025:有機+1.8% | FY2025:有機+2% | H1 2025:USG+3.4% | Q2 2025:有機+0.1% |
配当利回り(概算) | 約2.4%($2.08/年) | 約2.6%台 | 約3.3%台 | 約1.2%台 |
連続増配年数 | 62年 | 68–69年 | (連続増配は非連続) | 昇配継続だが年数は短め |
データ出典:
・CL株価/時価総額($85.94・$69.46B)とLTM売上($19.999B)
・CL FY2024売上$20.1B、Q2 2025有機+1.8%
・PG FY2025売上$84.3B/有機+2%・時価総額(約$3.6T)
・UL H1 2025 Turnover €30.1B/USG+3.4%、時価総額($154.6B)
・CHD Q2 2025売上/有機成長、時価総額($23.15B)
・配当利回り参考(CL年率$2.08、PG/UL/CHDは直近水準)
セクター比較(生活必需品の位置づけ)
- 防御力:消費財の中でも必需品比率が高く、景気減速局面で相対堅調。
- 為替/コモディティ:国際売上と素材コストの影響を受けやすく、価格改定とサプライチェーン効率が勝負。
- 評価レンジ:プレミアム銘柄(PG/CL)はやや高い倍率を容認されやすい一方、成長率が鈍ると素直にリレー トレードされる。
投資妙味は「ブランド×価格主導×原価抑制×為替」の四点バランスとなります。CLはブランドと価格主導力で強く、FXとコストが課題です。
今後の戦略と展望
- プレミアム化の継続:オーラルでのホワイトニング/センシティブ訴求の強化、ペットは療法食を軸に継続投資。
- 生産性とAI活用:原価・包装材・物流の最適化と、デジタル/AI活用による需要予測・価格/サイズ設計の高度化。
- 資本配分:配当成長+新たな$5B自己株買い枠で総還元を確保。
- ガイダンス:2025年のEPSはローシングル成長見通し。カテゴリの持ち直しと下期改善に依存度。
投資家にとってのメリットとリスク
メリット
- 配当成長の確度(62年連続増配)とディフェンシブ性。
- 価格/ミックスでの売上防衛力、プレミアム商品比率の上昇余地。
リスク
- 為替逆風の長期化で見かけ売上・利益が押される可能性。
- 原材料・関税コスト増で粗利率の伸びが限定。価格転嫁の受容性が鍵。
- ペットPL縮小の短期的マイナス寄与。
評価指標では、簿価が小さい企業特性上PBR/ROEが歪む点に注意。筆者はEV/EBITDA、FCF利回り、粗利/営業利益率のトレンドを重視します。
まとめ:私のスタンス
CLはブランド×プレミアム化×配当一貫性が魅力のディフェンシブ主力。2025年はFX・コスト逆風で成長実感が薄く見える一方、オーガニックはプラスを維持。短期はレンジ想定だが、押し目での分散買い→中期でインカム&漸進成長を狙う配置が合理的だと考えます。競合(PG/UL/CHD)との相対では、規模でPG、利回りでUL、ニッチ/実行力でCHDが強み。CLはその中間で“下に強く、上も狙う”ポジションに収まっています。
出典・参考
- Colgate 2Q25プレスリリース/準備資料:オーガニック+1.8%、PLペット-0.6pt、粗利率等。
- 配当履歴/連続増配年数(62年)・配当増額($0.52):IR/BusinessWire等。
- 株価/時価総額:CL($85.94・$69.46B)・PG/UL/CHDの時価総額。
- 売上規模:CL FY2024 $20.1B/LTM約$20.0B、PG FY2025 $84.3B、UL H1 2025 €30.1B、CHD Q2。
- セクター動向・価格主導・消費動向(P&G/ULのコメント、メディア各社)。
- 原材料/関税・生産性/AI投資に関する報道。
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