【2025版:米国株分析】シェブロン(CVX)について徹底分析

金融

いまのシェブロンは「量から質」へ舵を切った大手の代表格です。2025年4-6月期は調整後EPSが1.77ドルに減速しつつも、ペルミアンで日量100万BOEの大台を達成、通期の成長ドライバーだったカザフスタン・テンギスの増強が立ち上がり、7月にはHess買収の法的不確実性も解消してクローズしました。数字は鈍く見えるのに、事業構造は強くなっているといえます。


・Q2 2025は純利益25億ドル、調整後31億ドル(EPS1.77ドル)。同四半期に自社株買い26億ドル、配当29億ドルで株主還元は55億ドル。
・Permianは100万BOE/日を突破し、米州/世界全体の生産も四半期過去最高。
・テンギスFGP/WPMPが稼働入り、「次の10年」の土台が整備。
・Hess買収は国際仲裁の勝利を受けて7月に完了。ガイアナ権益の不確実性が大きく低下。


結論として、短期の利益よりも中長期の生産・FCF基盤の強化が進んだのが2025年のポイントです。


スポンサーリンク

なぜこのタイミングで分析を行う意味があるのか

2025年夏のシェブロンには「イベントが重なった後の静かな地ならし」があります。

今は、イベントドリブンの不確実性が和らぎ、資本配分の妙味を評価しやすい「検証のタイミング」です


・Hess買収の決着(7/18)で最大テーマだったGuyanaの権利問題が一段落。
・8/8にガイアナ第4船(One Guyana/FPSO)が稼働、JVの生産能力が90万bpd超に拡張。Chevronの成長視界が実務面で広がった。
・同時にCapexを24年比で約20億ドル絞る方針(14.5–15.5B)。「成長率→FCF重視」への転換点。
・Q2決算でPermian100万BOE/日を公表し、量の達成から質の最適化フェーズへ向かっています。


分析対象の概要

シェブロン(CVX)は上流〜下流を抱える米系インテグレーテッド・メジャー。株主還元規律が強く、増配は38年連続、足元の四半期配当は1.71ドル。ネットデット比率はQ2期末で**14.8%**と保守的です。
・事業:上流(原油・ガス生産)、下流(精製・販売)、ケミカル、低炭素(再生可能燃料/水素/CCUS)
・地理:米国(Permian・Gulf of Mexico)と国際(テンギスほか)で分散
・株主還元:Q2だけで55億ドル(うち自社株買い26億ドル、配当29億ドル)
要するに、ディフェンシブな資本構成+一貫した配当文化+大型案件の稼働という三拍子がそろう企業です。


事業内容と業界動向

原油価格が軟化する局面でも、米メジャーは生産性向上と資本規律で稼ぐ構造に移行中。シェブロンはその筆頭です。・上流:Permianが100万BOE/日に到達。新規掘削の加速ではなく、FCF最大化がキーワード。
・国際上流:テンギスFGP/WPMP稼働で長期の底上げ。
・ガイアナ:Hess統合後、Exxon主導のStabroekで第4船稼働。今後の増産余地大。
・下流/ケミカル:稼働改善と設備増強(パサデナ等)。再生可能ディーゼルのGeismar拡張も立ち上がり。
・低炭素:水素(ACES/ユタ)、CCUSハブ、再生可能燃料へ着実投資。

価格サイクルに依存し過ぎない「広い利益の取り口」を作ったのが直近の変化です。


SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)

収益基盤は広がり、外部逆風への耐性は相対的に増しているが、コモディティの宿命は残ります。

・強み:Permianの規模と操業効率、テンギス/ガイアナという超優良アセット、堅いバランスシートと増配文化。


・弱み:精製マージン/価格サイクルの逆風時には利益感応度が高く、Q2のようにEPSが縮むことは避けがたい。

・機会:Hess統合によるGuyanaの長期成長、Permianの最適操業、低炭素事業(再生燃料・水素・CCUS)の商用化。


・脅威:原油下落・需要鈍化、プロジェクト実行リスク、資本規制や環境規制の強化。


競合他社との主要な財務指標比較

同じ「統合型」でも配当・バイバック・成長原資の配り方に違いがあります。


Chevron:Q2調整後EPS1.77、還元55億ドル(Buyback26億/配当29億)、FWD配当は1.71ドル/四半期。

ExxonMobil:Q2純益71億ドル、配当0.99ドル/四半期、買戻し継続。FWD P/Eはおよそ16倍。

Shell:Q2調整後43億ドル、CFFO119億ドル、3.5Bの追加買戻し。FWD P/Eは11倍台。

ConocoPhillips(E&P型):Q2調整後EPS1.42、日量239万BOE、資産入替を加速。


CVXのFWDバリュエーション:各社の算定条件でブレるが、直近の集計ではFWD P/Eはおおむね高めに張り付く(利益ボラの影響)。


要は、CVXは“高還元×堅実成長”を掲げ、欧州勢よりバリュエーションはやや高め、XOMより成長率は控えめという立ち位置です。


セクター比較

統合型メジャーはE&P単体よりもサイクル耐性が高く、欧州勢は買戻しを厚く積み上げる傾向、米勢は配当の一貫性が強みです。

・統合型(CVX/SHEL/BP):上流と下流の相殺が効き、CFFOは原油下落局面でも粘る。Shellの四半期買戻し継続は象徴的。
・E&P(COP):価格直撃だが成長は速い。Q2も数量でカバー。
・米vs欧州:米は増配の連続性(CVX38年)、欧州はダイナミックな買戻し。


セクターの文脈では、CVXは「守りの厚い配当+選択的成長」型の代表です。


今後の戦略と展望の分析

私の見立ては「Permianの“量”を極め、Guyana/テンギスで“質”を磨く」。低炭素は“実装”段階に入ります。
・Permian:100万BOE/日を維持しつつ、FCF最適化へ(作業効率・仕上げ改善の徹底)。
・Guyana:FPSO第4船稼働でJV全体の生産余力が拡大。Hess統合のシナジー顕在化へ。
・Kazakhstan:FGP/WPMPが“名板能力”に到達、長寿命化とベースロード強化。
・資本配分:25年Capexは14.5–15.5Bに抑制。景気・価格に合わせて柔軟運用の余地。
・低炭素:Geismarの再生ディーゼル拡張稼働、水素(ACES/テキサス青色水素構想)、CCUSハブで“商用化”の手応えを積む。


総じて、“高品質な原油・ガス×実装系の低炭素”で、資本回収力の分散化を狙う戦略と評価します。


投資家にとってのメリットとリスク

結論としては、配当を取りながら“質の成長”を待てる投資家向きのプロファイルといえるでしょう。

○メリット
・増配38年&堅実なネットデット(14.8%)で下押し耐性。
・Permian/Guyana/Kazakhstanの3本柱で量と質のバランスが良い。
・還元一貫(Q2の総還元55億ドル)で長期の総合リターンが読みやすい。

○リスク
・原油・ガス価格の下落、精製マージンの悪化でEPSが圧縮される。
・ガイアナ/大型案件の運転・政治・規制リスク(ガイアナはJV関係/政策変動の影響余地)。
・低炭素投資の商業化進捗(規制/補助の不確実性)と収益寄与タイミングの見極めが必要。


まとめ

私はCVXを「右肩上がりを“急がない”強さ」で評価します。

Q2のEPS鈍化は事実ですが、その裏でPermian100万BOE/日、テンギス稼働、Hess買収完了が揃いました。Capexを絞りつつ、還元を続け、低炭素を“実装”段階に押し上げる。この総合力こそ、景気と原油の波を抜けるための“深い守り”だと考えます。

短期の値動きは読めませんが、中長期では厚い配当・着実なFCF・高品質アセットの三位一体が報われる可能性が高いと私は考えます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました