【2025最新版】Dover(DOV)徹底分析|将来性、70年増配の本質と最新決算

金融

更新日:2025-09-07(日本時間)

Dover(NYSE: DOV)は、2025年7月24日の第2四半期決算(Q2)で通期の調整後EPSガイダンスを9.35〜9.55ドルへ引き上げ、続く8月8日には連続増配70年目となる四半期配当$0.52への増配を発表しています。
私は「配当の継続性×構造的成長(データセンター液冷・クリーン燃料・高付加価値ポンプ)」の組み合わせが、景気循環に左右されにくい中期のリターン設計を可能にしていると考えています。本記事では、表層の数字に留まらず、事業構造や競争環境、規制動向からリスクまで掘り下げ、投資家視点での結論を提示します。

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分析対象の概要

  • セクター:米国・産業財(分散型工業コングロマリット)
  • 時価総額:$243〜244億(2025/9/6時点、為替除く概算)
  • 2024年実績:売上高$7.7B、調整後EPS$8.29、調整後FCF約$1.0B(売上の約13.5%)
  • ビジネスモデル:消耗品・アフターマーケット・ソフトウェア/デジタルを織り交ぜた高マージンなニッチ機器/ソリューションを、5つの事業セグメントで展開

5つの事業セグメント

セグメント 主な製品/用途 着目点
Engineered Products 廃棄物処理・車両整備機器 等 短サイクル回復局面で感応度高
Clean Energy & Fueling(DCEF) OPW/DFSの計量機・支払・タンク計測、車両洗浄 決済/監視のデジタル化でストック収益化が進展
Imaging & Identification Markem-Imaje等のコーディング・トレーサビリティ 規制/品質管理強化の恩恵
Pumps & Process Solutions(PP&PS) PSG、MAAG等のポンプ・押出・流体制御 M&Aで高成長アプリケーションへ拡張
Climate & Sustainability Technologies(CST) 冷凍・冷却(SWEP等) データセンター液冷/自然冷媒の構造的追い風

3C+リスク分析

Company(自社)

  • ポートフォリオ最適化:2025年6月に計測・制御のSIKORA買収をクローズ。2024年にはLPガス/クライオ向けMarshall Excelsior(MEC)を買収し、OPW内へ編入。高付加価値・規制追い風の領域へ資本を集中。
  • 営業実行:2025年Q2は売上+5%(オーガニック+1%)、過去最高のセグメントマージン水準。通期調整後EPSガイダンスを9.35〜9.55へ引上げ。
  • 資本配分:増配70年目。M&Aと増配/自社株買いのバランス感度が高い。

Competitors(競合)

  • Illinois Tool Works(ITW):2024年売上$15.9B営業利益率26.8%。超高収益のベンチマーク。
  • Roper Technologies(ROP):2025年の調整後EPSガイダンス$19.90〜$20.05(ソフトウェア比率高)。
  • Emerson(EMR):2025年調整後EPS見通し約$6.00。プロセス自動化・計装色が強い。

Customer/Market(市場)

  • データセンター液冷:SWEPのろう付け板型熱交換器はCDUやフリークーリングで採用が進み、熱回収含む省エネ要件の強化が追い風。
  • 燃料リテールのDX:DFS/OPWはPOS/決済/監視のクラウド統合(Bulloch POS、DX Fleet等)で稼働率・セキュリティ向上とストック化を推進。
  • 規制対応:EUのF-Gas改正や米国AIM法に伴う低GWP冷媒化は、CST/PP&PSの需要を下支え。

Key Risks(主なリスク)

  • 景気減速による短サイクル需要の鈍化:短納期部品でのボラティリティ。
  • 価格競争・為替:欧州比率の高い事業は為替影響が残る。
  • 規制の転換・認証遅延:冷媒規制や決済/セキュリティ規格の変更は一時的なコスト増に。
  • M&A実行リスク:シナジー創出の遅れや買収価格の上振れ。

SWOT分析

Strengths(強み)

  • 70年連続増配に象徴されるキャッシュ創出力と規律ある資本配分。
  • 分散ポートフォリオ×アフターマーケット比率の高さ。
  • データセンター液冷、自然冷媒、トレーサビリティなど構造需要への高い露出。

Weaknesses(弱み)

  • ITW/ROPに比べるとソフトウェア比率が低く、マルチプルの天井が意識されやすい。
  • 短サイクル事業の景気感応度。

Opportunities(機会)

  • 液冷データセンター、冷媒転換、クリーン燃料の拡大。
  • DFS/OPWの決済・監視のクラウド化による継続課金の拡大。
  • 選択と集中を進めるM&A。

Threats(脅威)

  • 規制/認証の不確実性(冷媒、支払、サイバー)。
  • 原材料・労務コストの上振れ。
  • 大型案件の延期(データセンター投資のタイミング)。

財務分析(PL/BS/CF/株主還元)

損益(PL)

  • 2025年Q2:売上$2.05B(+5%、オーガニック+1%)、調整後EPS$2.44(+16%)。
  • 2025年通期:調整後EPSガイダンス$9.35〜$9.55(上方修正)。

貸借(BS)

  • ムーディーズBaa1/S&PBBB+、いずれも安定的(Stable)。投資適格で調達柔軟性が高い。

キャッシュフロー(CF)

  • 2024年FCF:報告ベース$0.92B(売却関連税含む)。非経常調整後の実力FCFは約$1.0B
  • 2025年上期も受注・バックログの積み上がりにより後半のキャッシュ創出に自信。

株主還元

  • 2025年8月:四半期配当を$0.52へ増額(70年連続増配)。
  • 2024年:年間DPS$2.05。増配率は控えめでも「途切れない」ことが価値。

競合比較(主要指標の俯瞰)

企業 売上 収益性/ガイダンス 示唆
Dover 2024:$7.7B 2025調整後EPS $9.35〜$9.55 構造成長×増配継続のバランス
ITW 2024:$15.9B 2024営業利益率26.8% 超高収益の業界プルーフ
Roper ソフト比率高 2025調整後EPS$19.90〜$20.05 ストック型で景気耐性
Emerson 大規模自動化 2025調整後EPS約$6.00 プロセス産業の循環影響

注)各社の会計基準・調整定義は異なります。詳細は各社IR資料をご確認ください。

セクター比較の視点

  • ディフェンシブ度:ITW>ROP≧DOV>EMR(ソフト/消耗品比率の高さが鍵)。
  • 成長ドライバー:DOVは「液冷・自然冷媒・決済DX」といった規制/技術トレンドに沿った実需が多い。
  • 評価(バリュエーション):ソフト比率の低さでDOVのマルチプル天井は意識される一方、FCF利回りと増配履歴が下支え。

投資家にとってのメリットとリスク

メリット

  • 70年連続増配×投資適格の組み合わせでドローダウン耐性。
  • 液冷・冷媒転換・燃料小売DXなど構造テーマへの露出。
  • M&Aで高マージン領域へミックス改善を継続。

リスク

  • 短サイクル減速、価格競争、為替。
  • 規制・認証変更に伴うコスト/導入遅延。
  • M&Aの統合・のれんリスク。

コア保有+押し目買いの適性が高い銘柄といえます。配当再投資を軸に、液冷・自然冷媒・決済DXの伸長がEPSとFCFの逓増につながる限り、適正レンジのバリュエーションで中期の複利を狙えると考えます。

まとめ

Doverは「地味だが強い」分散型ものづくりの典型です。

2025年Q2のガイダンス引き上げと70年目の増配は、単なるマイルストーンではなく、ポートフォリオ最適化、デジタル化、規制ドリブンの需要といった構造的な裏付けの表現です。景気の波はあるものの、配当の持続性と構造成長の両立という観点で、依然として魅力は大きいと評価します。

出典・参考リンク

  • Dover 2025年Q2決算/ガイダンス引き上げ(PR):PR Newswire
  • 70年連続増配・配当$0.52(PR):PR Newswire
  • 事業セグメント一覧:Dover公式
  • Doverの格付け(Baa1/BBB+、見通し安定):Debt Rating

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