【2025版:日本株分析】ソフトバンクグループについて徹底分析

金融

2025年8月、ソフトバンクグループ(SBG)は4–6月期(FY2025 Q1)で純利益4,218億円と黒字転換。株価は決算後に過去最高値を更新し、AI関連期待と実績が同時に可視化されました。

背景には①Armの売上10億ドル超の継続、②ビジョンファンドの評価益復活、③LTV17%・NAV割安のバランスシート、④自社株買いの累計実績という「攻めと守り」の両立があります。

さらに米国で進むStargate級AIインフラ構想への資金配分という“大きな物語”が、投資家の目線を長期に伸ばしています。

  • FY2025 Q1の純利益:4,218億円(前年同期は赤字)

  • 株価反応:決算を受けて13%高・最高値更新

  • NAV/株主価値:NAV/株22,748円・LTV17%(6/30時点)

  • 自社株買い:2024/8〜2025/8で3,303億円、4,203万株を取得


この四点が「足元の数字に裏付けられた期待」を作り、“話題先行”から“内容伴走”へ相場の位相が移ったと結論づけられます。

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なぜこのタイミングで分析を行う意味があるのか

いま取り上げる理由は三つ。第一に四半期決算の質が変わったこと(SVF評価益+コンソリのP/Lの厚み)。

第二にArmの短期ガイダンスは難ありでも“ロイヤルティ+25%”で構造成長が見えてきたこと。

第三に「NAV割安と資本政策(買戻し)が同時に効いているため、「割安株」かつ「成長株」の二面性がPVを伸ばしやすいからです。

  • Q1のSVF関連評価益:6,602億円相当の投資損益(セグメントベース)

  • Arm:売上約10.5–10.6億ドル、ロイヤルティ25%増

  • 株主価値:NAV/株22,748円に対し、6/30株価10,515円(約54%ディスカウント


決算イベント直後でデータが鮮度高く、論点(NAV・Arm・AIインフラ)が整理しやすい今こそ“読む理由”が強いということです。

分析対象の概要

SBGは投資持株会社。主要な価値源泉はArm・ビジョンファンド群・SBKK(通信)、加えてT-Mobile、DT、Alibaba等のポジション。2025年6月末時点のNAV合計32.4兆円、LTV17%、Armは調整後で19.8兆円の寄与と“中核資産”化しています。

  • NAVの内訳(6/30):Arm 19.83兆円、SVF1 3.80兆円、SVF2 5.86兆円、SBKK 3.47兆円等

  • T-Mobile株の一部売却:4–6月に約48億ドル(2,150万株)売却

  • キャッシュの動き:税支払で流出が大きい一方、OpenAI関連への追投も進行


保守的なレバレッジ管理(LTV17%)のもと、巨額のAI投資と資産入替えを並走させているのが現在地です。

事業内容と業界動向

本質は「Armのプラットフォーム価値」×「AI需要の裾野」です。ArmはFY26 Q1も売上10億ドル超を継続、ロイヤルティが前年比+25%と“使用量課金の成長”が鮮明です。

短期はガイダンス弱含みで株価は乱高下も、AI/データセンター・Automotive・モバイルの三本柱で質の異なる成長へ向かっているといえます。

  • Armの構造:アーキテクチャ+IPライセンス+ロイヤルティ、CSSで開発短縮

  • 業界潮流:AI推論の電力・コスト制約→アーキ効率(Armv9等)への追い風

  • 需給面:Q2見通し弱くボラ高いが、中期はロイヤルティの逓増が効く


まとめると、Armの“量×単価”が中期NAVを押し上げる一方、短期の見通しブレはニュースフローの山場になります。

SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)

総じて、“NAVの守り”と“AIの攻め”が同居するが、資金循環の設計が成否を左右する構図です。

強み

  • Armの寡占的地位(スマホからDCまでの広域適用)とロイヤルティ成長

  • LTV17%・NAV32.4兆円、割安を測る“物差し”が明示され、資本政策が機能。


弱み

  • Armの短期ガイダンス鈍化や“自社チップ開発報道”など、見通しと戦略転換に対する市場の感応度が高い

  • 税支払などでキャッシュアウトが時期的に膨らむ四半期がある。


機会

  • AIデータセンターの勃興とStargate級案件で、関連投資のバリューチェーン形成

  • 自社株買い継続余地とPayPay等のIPO/モネタイズの選択肢


脅威

  • 大型AIインフラ投資の資金手当・リターン実現タイムラグ

  • 規制・地政学(半導体・データ関連)の不確実性

競合他社との主要な財務指標比較

「投資持株×テック露出」という観点で、Berkshire(米)/Prosus(蘭)と比較します。BerkshireはP/Bが1.5倍前後、Prosusは恒常的にNAVディスカウントで取引。SBGの“半値超ディスカウント”は際立ちます。

  • SBG:NAV/株22,748円、株価10,515円(6/30)→約▲54%、LTV17%

  • Berkshire:P/B ≈ 1.50倍(8/8時点)

  • Prosus:NAV▲28%ディスカウント(7/22基準の外部推計)、NAV総額公表(8/8)


この比較から、SBGの“割安の度合い”はグローバル同業でも大。一方でBerkshireのような安定実需キャッシュフローと比べると、SBGは評価益のブレが大きいことは留意点です。

セクター比較

SBGを「AI関連(半導体・データセンター)」「通信」「金融(投資会社)」の横断テーマで俯瞰します。

  • 半導体:Armはロイヤルティ寄与が加速。短期ガイダンスの強弱でボラは高いが、中期の構造成長は明確。

  • 通信(SBKK):安定キャッシュのNAV下支え。金利・料金政策・端末販売のサイクルでブレは限定的。

  • 投資会社:自社株買い・資産売買でディスカウント解消を狙うゲーム。Prosus等の事例からも割安は構造化しやすいが、縮小局面は強烈


よって、SBGは“半導体景気×資本政策”の二軸でセクター横断のメリットを取り得ます。

今後の戦略と展望の分析

焦点は三つに集約されます。結論として、“守りはLTV/NAV、攻めはArm/AIインフラ”の二段ロケットで、「イベントドリブン×中期成長」の両取り設計が続くとみます。

  • ①Armの中期シナリオ:データセンター/車載のロイヤルティ逓増が本丸。短期ガイダンスの弱さはオペ費先行や投資加速の裏返しで、長期総量の成長は維持

  • ②AIインフラ投資(Stargate等):巨額だが、OpenAIエコシステムや米国DC需要と連動する“選択と集中”。T-Mobile株の部分売却や既存資産のモネタイズで“循環”を作れるかが鍵。

  • ③ディスカウント解消自社株買いの継続と、PayPay等の上場/還元で「NAV→株価」への橋渡しをどこまで加速できるか。

投資家にとってのメリットとリスク

私見では、押し目は“NAVディスカウントが拡大した局面”を一段目、イベント(Arm決算・資本政策)前後のボラで二段目という分割アプローチが合理的だと考えます。

メリット

  • NAVディスカウントの大きさ(約▲54%)と自社株買いの存在。割安修正の“物理的圧力”が働きやすい。

  • Armの構造成長(ロイヤルティ伸長)によるNAVの自然増

  • バランスシートの健全性(LTV17%)で、相場変動に耐性。


リスク

  • Armの短期ガイダンス弱含みや自社チップ開発方針など、期待と現実のギャップでボラ拡大。

  • AIインフラ案件の資金回収リスク、政策・規制の不確実性。

  • 評価益依存の収益変動(SVFの市場連動性)。

まとめ

ソフトバンクGは「割安でありながら、成長も語れる」稀有な段階に入りました。

NAV/株22,748円・LTV17%・自社株買いという“守りの3点セット”に、Armのロイヤルティ成長とAIインフラ投資という“攻めの2点セット”が噛み合い、ニュースが集めやすいこと

短期の波(Armガイダンス、Stargate資金計画)は織り込みつつ、中期は“NAVの自然増+ディスカウント縮小”を素直に狙うのが有効なアプローチのひとつと言えるのではないでしょうか。

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