【2025版】エアロスペース(GE)徹底分析:将来性と押し目待ちの強気

米国株
更新日:2025-09-112024年のスピンオフ完了で、元コングロマリットのGEは純粋な航空エンジン企業「GE Aerospace」として再スタートしました。
エアバス/ボーイングの新造機供給が思うように伸びない中、航空各社は機齢延伸を余儀なくされ、結果としてMRO(整備)・スペアの需要が膨らむ構図が続いています。
GEはここに“時間が味方する”収益モデルを持つ企業です。
本記事では、事業の構造変化と競合の再編、財務の質を丁寧に掘り下げ、投資家にとってのメリットとリスクを整理します。
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分析対象の概要(ビジネスモデルと位置づけ)

セクター:米国・資本財(航空宇宙)/ティッカー:GE

  • 事業柱:民間のCommercial Engines & Services(CES)と軍需Defense & Propulsion Technologies(DPT)の二本柱。
  • 装着基盤:商用約45,000基+軍需約25,000基の推進系がグローバルに稼働し、アフター(サービス)比率は約70%に達するストック型収益。
  • 主力製品:CFM(GE×Safran)のLEAPはA320neo/737MAXの主力。ワイドボディはGEnx、次期GE9X(777X)等を保有。
  • 直近決算:2025年2Qは調整後売上+23%OPマージン23.0%FCF 21億ドルと好調。2024年通期はGAAP売上387億ドル調整後OP 73億ドルFCF 61億ドル
  • 株主還元:2025年は四半期配当$0.36を継続し、2024〜25年は自社株買いの積極化も表明。
ポイント:GEは「装置販売(低マージン)」→「長期サービス(高マージン)」で利益を回収するモデル。装着基盤と稼働時間がキャッシュフローの源泉です。

3C+リスク分析(Company / Competition / Customer + Risk)

Company:自社の強みと課題

  • スケールの経済:装着基盤7万基級×広域MROネットワークでサービス収益が厚い。価格・ワークスコープ最適化が利益率を押し上げ。
  • LEAP増産の可視性:2025年のLEAP引渡しは前年比15〜20%増見通し、2028年に年2,500基体制を計画。
  • 資本配分:FCF成長を背景に配当$0.36/四半期買戻しを継続。総還元方針が明確。

Competition:競合の動向

  • RTX(Pratt & Whitney):GTFの粉末金属問題で2023〜24年に現金面の逆風。ただし大規模バックログで中長期の回復余地。
  • Rolls-Royce:民間整備の採算改善が進み、2025年上期はOPマージン約19%まで拡大、通期ガイダンスも上方修正。
  • Safran:LEAPのJVパート。2025年もLEAP引渡し増と価格政策で利益成長を計画。

Customer / Market:需要環境

  • 新造機タイト:エアバス/ボーイングは供給制約と認証面の制約が残り、航空会社は既存機の稼働延長へ。結果としてMRO需要が構造的に増加
  • ワイドボディ回復:777X(GE9X)は2026年就航見通しで、ワイドボディ整備・部品需要の下支え。

Risk:主要リスク

  • サプライチェーン:部材・人材の逼迫が続き、LEAP出荷やMROターンアラウンドに遅延を生む可能性。
  • OEMの遅延:機体側の認証・就航スケジュール(例:777X)に引っ張られる出荷タイミング。
  • 通商・規制:関税・環境規制・SAF対応などによるコスト上振れ。

SWOT分析

Strengths(強み)

  • 装着基盤の大きさ×サービス比率約70%という高採算ストック
  • CFM(Safran)とのJVでナローボディの牙城を確保。

Weaknesses(弱み)

  • OEMの生産計画・サプライ網に連動したボラティリティ
  • 防衛は伸びているが、現時点では民間ほどの採算牽引力は限定的

Opportunities(機会)

  • 新造機タイト→MRO・スペア拡大という追い風。
  • RISE(オープンファン等)で燃費20%改善を狙い、次世代機の主導権確保。

Threats(脅威)

  • GTFの正常化・Rollsの回復で価格競争が強まる可能性。
  • 通商・環境対応(SAF供給、騒音規制)コストの上振れ。

財務分析(PL / BS / CF / 株主還元)

項目 GE(最新) 補足
2024通期 売上(GAAP) 387億ドル 調整後売上 351億ドル
2024通期 OP(調整後) 73億ドル OPマージン 20.7%
2024通期 FCF 61億ドル CF創出力を大きく改善
2025年2Q(調整後) 売上+23%/OPM 23.0% FCF21億ドル(前年ほぼ倍)
配当 $0.36/四半期 2025年も維持(6/27決議等)
自社株買い 積極化 24–25年に実施・継続方針

注:上記は公表値(GAAP/Non-GAAP)混在。詳細は出典参照。

セクター比較(時価総額と成長ドライバー)

企業 主力領域 時価総額(2025-09概算) 近況ポイント
GE Aerospace 商用+防衛推進、MRO 約2,930〜3,040億ドル サービス厚く、LEAP増産・GE9Xで中期成長
RTX(Pratt & Whitney) GTF/装備・システム 約2,040〜2,110億ドル GTFの点検・補償で短期CF逆風も正常化進展
Safran LEAP JV・装備 約1,170億ユーロ LEAP引渡し増・価格政策で利益拡大
Rolls-Royce ワイドボディ中心 約9,200億ポンド OP/FCFガイダンス上振れ、マージン改善
  • 短期ドライバー:新造機不足→MRO・スペアの高単価案件拡大。
  • 中期:LEAP増産、ワイドボディ(GEnx/GE9X)回復。
  • 長期:CFMRISEなど次世代推進系の実用化。

投資家にとってのメリットとリスク

メリット

  • ストック型の収益構造:サービス比率が高く、景気変動に相対的に強い。
  • 資本配分の明確化:配当+買戻しで総還元が可視化。
  • 技術ロードマップ:RISE/GE9X/電動・ハイブリッド等、次世代でも主導権を狙える。

リスク

  • バリュエーション:同業比プレミアム。増産遅延・ニュースフロー次第で逆風が出やすい。
  • 供給網:部材・人員の逼迫が長引く場合、出荷・MROの遅延を通じて業績のタイミングに影響。
  • OEM要因:777Xの就航時期など機体側に左右される装置売上の期ズレ。

まとめ(立場の明示)

押し目待ちの強気と考えられます
理由は(1)サービス比率の高さと装着基盤がキャッシュの持続性を担保、(2)配当$0.36と買戻しで株主還元の質が高い、(3)LEAP増産・GE9X・RISEで中長期の成長経路が見える、の3点です。
短期ではサプライチェーン/OEM要因の波乱も想定しつつ、ニュースフロー(LEAP月次、777Xマイルストーン等)をトリガーに押し目を拾う戦略が合理的だと考えます。

参考資料(公表一次情報・業界レポート)

  • GE Aerospace 2024通期・2025年2Q 決算/IR資料
  • SEC 10-K/10-Q(サービス比率/装着基盤)
  • CFM/業界メディア(LEAP増産計画・サプライ網)
  • Reutersほか(777X就航時期・OEM供給動向)
  • Macrotrends / CompaniesMarketCap 等(時価総額の概況)

 

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